なかなか成績が伸びず、ブルーになっているあなたへ

早いもので、センター試験や私大の一般入試まであとわずかです。おそらく今頃は、受験する大学の赤本を活用した、実践的な受験対策を進めていることと思います。いくら直前期とはいえ、赤本を解いていると、できた年度の問題もあれば、できなかった年度の問題もあるでしょうし、対策を続けた結果、できるようになった問題もあれば、いくらやってもできるようにならない問題もあるでしょう。でも、受験勉強は、そうした試行錯誤の繰り返しです。たとえ間違えた問題が多くても、正答率が上がらなかったとしても、ぜひめげずにそのまま継続してください。個人差はありますが、本番までには手ごたえらしいものを感じてくると思います(そうでないと困りますが・・・)。

ただ、中にはいくらやってもできるようにならない、成績(や偏差値)が伸びないため、ブルーになり、やる気を失いかけ、モチベーションの維持に苦労している方もいるかもしれません。実際、こうした状況になり、どうすればいいかという相談は、どんな時期にもありますが、直前期には特に多く、事態はより深刻さを増しています。そこで、そんな方々のために、私がこうした相談を受けた際に、どのようなお話をしているのかを、典型的なケースごとにご紹介いたします。全員のお役に立てるかはわかりませんし、普段は私も臨機応変に対応していますので、同じようなケースだからと言って、誰にでも同じ内容のことを話しているとは限りません。ただ、一応高頻度の例を取り上げますので、もしご自分の身に覚えがあれば、それについて参考にしていただければと思います。


1.努力が報われないケース

これは、「今まであんなにがんばってきたのに、どうして成績が上がらないのか?」と悩むケースです。勉強していないのならともかく、やっているのに、それもかなりの時間をかけているのに上がらないため、これ以上どうすればいいのか不安になるのです。これには大きく分けて2つの原因があると思います。1つは、やり方(効率)が悪いことです。

例えば、単語カードやまとめノートを作ったりするなどの「作業」が長く、それを覚えるまでに至らなかったり、授業の予習に3、4時間もかけてしまったり、ただノートや参考書を見返しているだけで、覚えた内容を定着させるべく、手を動かして問題演習を繰り返すことがなかったり、時間無制限でただ赤本を解いているだけだったりするため、時間をかけている割には定着しないのです。しかも、定着しない分は、さらに時間をかけることで補おうとするため、例えば本来なら1時間弱でできることを、2時間以上かけていたりすることもあるのです。もし、「今の勉強のやり方では、時間がかかってしまうが、どうすればいいか」といった悩みがあれば、ぜひ予備校の職員や講師に相談してみてください。もし「時間をかけてでもそれはやった方がいい」と言われたら、安心して続けてください。もし「それは非効率だからこのやり方がいい」など、別のやり方をすすめられたら、途中でも思い切ってそのやり方に切り替えてみてください。

もう1つは、やり方が悪いわけではなく、単に「まだつぼみで、開花していない」状態が続いているため、いくらやっても上がらないと思い込んでいることです。ここであきらめてしまうと、せっかくここまでやってきたことが無駄になってしまいます。そもそも、今のタイミングで既に大丈夫だと思うような大学だったら、第一志望校にはしないと思います。ある程度入るのに苦労するからこそ、第一志望校にする価値があると感じたはずですし、だからこそ、何としてでも合格できるようがんばろうと思ったはずです。ですので、「現時点で不安があっても不思議ではない」と前向きに考えてください。特に高校生の場合は、手ごたえらしい手ごたえを感じるのは、本当にギリギリのタイミングです。ということは、たとえ最後の模試でも手ごたえを感じなかったとしても、これからでも伸びる可能性があるということです。ですので、今はまだあきらめず、最後の最後で報われることを信じて勉強を継続してください。継続が最大の解決方法です。

ただし、現状の実力と志望校のレベルとが、あまりにかけ離れているようなら話は別です。目安としては、直近の模試での偏差値と、第一志望校の偏差値とが10以上離れている場合です。可能性がないとまで断言はしませんが、残りの日数を考えますと、ただ厳しいだけではなく、あまりに差があり、ハードルが高すぎるため、いくら勉強しても追いつかない、勉強すればするほど現状を思い知らされ、かえって自信を失う、ということになりかねず、モチベーションの維持が困難だからです。この場合は、今までその大学を目指してがんばってきた自分自身を褒めた上で、志望校を変更し、過剰なプレッシャーから自らを解放してあげることをおすすめします。

おそらくこのタイプの生徒は、今まで自分として出来る限りの努力をしてきたことと思います。それだけでも十分立派です。第一志望校だけが大学ではありません。現時点でのベストを目指す方向にシフトしてもいい時期ですし、もちろん個人差はありますが、今からでも第二、第三志望校ならまだ可能性があるかもしれません。変に意固地になり、単に今まで通り続けるだけでは逆効果になりかねず、第一志望校どころか、全滅の可能性や、現実逃避から大学受験そのものへの意欲すらなくなる可能性もあります。実際、そうした生徒を毎年目の当たりにしているだけに、他人事とは思えません。「自分は大丈夫」などと思わず、ぜひ再考してみてください。特に、英作文や漢文など、第一志望校でのみ必要な種類の問題や科目がある場合はなおさら負担が大きく、全てが中途半端になり、バランスが崩れかねません。志望校を変更し、不要になった科目等にかけていた勉強時間や労力を主要科目にシフトすれば、第二、第三志望校への可能性が膨らみます。「荷物を軽くして」より高い山・よりよい果実を確実に手にすることを目指してください。尚、それでもどうしても変更したくないのであれば、せめて念には念を入れて、磐石な滑り止め校を複数受験してください。

2.「自業自得」のケース

厳しい言い方ですが、要は、今まで再三の声かけや注意にもかからわらず、勉強らしい勉強もせず、授業の遅刻・欠席が多いなど、明らかに本人に問題があるケースです。ただ、このタイプの生徒は、たとえ成績が上がらなくて困っていても、今までが今までだけに、ばつが悪いせいか、自分の方から相談に来ることはまれです。ですので、もし来たらじっくり話を聞いた上で、残りの期間でどう勉強するかをお話します。つまり、今までやっていなかったことをやらせるのです。その代わり、なぜやっていなかったのかはきちんと確認します。同じ理由で、また勉強から離れないようにしたいからです。もし、該当する方がいらっしゃれば、自分だけで試行錯誤せず、まずは予備校の職員や講師に相談し、何を最優先でやるべきか、いわば「交通整理」をしてもらうことをおすすめします。やるべきことが多すぎて、どこから手をつけていいのかわからず、それがあせりにつながる可能性があるからです。たとえ自分の力だけでやろうとしても、そんな状態では冷静な判断ができず、全てが中途半端になりかねません。

また、このタイプの生徒に特に言いたいのは、今から新たに参考書や問題集を購入せず、今まで使っていたものがあれば、まずはそれから終わらせてほしいということです。その教材を途中までしかやっていないということは、実力がその教材レベルで止まっているということだからです。時期が時期ですので、応用レベルの問題集や赤本をやりたい気持ちはよくわかります。「その方が早いのでは?」と思うでしょうし、それらを誰かから勧められればなおさらです。でも、たとえ時間がなく、わずかしかできないとしても、できる限り基礎を固める努力をした上で、応用レベルの問題集や赤本をやった方が、正答率が上がり、結果的には「急がば回れ」になるのです。それに、もしそれらを新たに始めたとしても、難しくて思うように進まず、そんな時に別の誰かから、また別の問題集を勧められたら、それに乗り換えたくなるでしょう。これでは、勉強せずに地に足がつかなかった今までと変わりません。

尚、以前使っていた問題集の続きを改めて行う際は、最初からではなく、続きから始めてください。そして、一周したら最初に戻り、残りの単元(例えば今回5章から始めたとしたら、残りの1〜4章)をこなしてください。最初からでは、最後の単元までたどりつくのに時間がかかりますし、どの科目も、後半の単元ほど入試にはよく出る傾向があるからです。また、もし以前やった問題集のレベルが高すぎ、こなしきれずに中断したのであれば、例外として、その続きをやる前に、基礎レベルの問題集を選び直してこなすのもやむを得ませんが、本番までの日数をよく考えてください。

3.漠然とした不安が高まるケース

このタイプの生徒は、今までサボってきたわけではありませんが、「覚えるべき内容がまだ覚えきれていない」「以前解いたはずの問題なのに解けない」などということがあるたびに、「これで本番は大丈夫か?」という不安に襲われるのです。ただこれは、どちらかと言うと、「入試本番が迫ってきた」ということ自体が、本人にとって過剰なプレッシャーになっていることが原因だと思われます。つまり、手ごたえのあるなしというより、本当にできるようになるのか、本番までに間に合うのか、入試本番でわからない問題ばかりが出たりはしないかなど、どうなるのかがわからないことへの漠然とした不安なのです。常に「どうしよう」「間に合わない」が口癖で、予備校の職員や講師にしても、そう言われても「とにかくやろうよ。その積み重ねだよ。あなたならできるよ。」くらいしか答えようがないのです。ひどい時には、受験で全滅する夢を見たりする生徒もいるほどです。

このタイプの方におすすめしたいのは、漠然としたものを具体化することです。漠然としているだけに、時間が経てば経つほど、不安がさらに増幅していくからです。そのために、入試本番までに何をしておきたいのかを紙に書いてみてください。元をたどれば、入試本番が迫っているのに、それまでに本当にやるべきことが間に合うのかがわからず、また、何をやり遂げれば、準備が間に合うことになるのかが、自分でもよくわかっていないことが、漠然とした不安につながっているからです。そこで、現在継続中の課題も含め、「自分なりにこれはやっておきたい」と思っていることを、洗いざらい書き出すのです。そして、それらに優先順位をつけると共に、いつまでに終わらせたいかと、こなす頻度(例:毎日5ページずつ)を書いていくのです。具体的にさえなれば、あとはやるだけですし、ペースが乱れればすぐにわかりますので、修正も早めにできます。それに、少し時間が空けば、今までなら「休憩」と称して、特に何もやらずにボーッとしていたのが、「それならこの時間で1ページ分だけでもやっておこう」という気持ちにもなるでしょう。全ては具体的になってからです。

4.その他

その他よくあるのは、例えばサッカー部やラグビー部、吹奏楽部など、部活を引退したのが2学期以降で、引退後すぐに受験勉強を始めたものの、やることが多い上、本番までの残り日数が少ないため間に合わない、と感じるケースや、今までAOや自己(公募)推薦対策に専念してきたのに合格できず、今から一般入試に間に合わせる自信がない、というケースなどです。どちらもブルーになるのもわからないでもありません。ただ、これらに該当する方にぜひ言いたいのは、「間に合わないかもしれない」と思う前に「どう間に合わせるのか」をとことん追求してほしいということです。

確かに時間的に不利なのは間違いありません。でも、これは誰のせいでもなく、こうなるリスクがあることを承知の上で、自らの価値判断で決めたことです。ですので、難しくても間に合わせないと、今までの自分を否定することになりかねません。そこまで考えないまでも、今までの自分を後悔することになれば、それも悲しいことだ思います。わずかとはいえ、まだ時間はあります。受験前日までに間に合わせればいいのですから、諦めずに最後まで取り組んでください。間違っても、この時点で浪人を考えないでください。それは、全ての合否の結果が出揃ってから考えても遅くありません。今考えてしまうと、これからの時期はいわば「消化試合」のような感覚になり、無気力さが蔓延し、結局もう1年ではすまなくなりかねないのです。

間に合わせるためには、まずは予備校の職員や講師に今後の学習計画について相談し、冬期講習は「取りまくる」つもりで取りましょう。「最後はプロに任せる」ということももちろんありますが、こうした悩みを抱えている方にとって、1人の時間が多すぎると、迫り来る不安から余計なことを考えてしまい、かえって集中力がなくなります。その点、講習がある程度入っていると、そうした不安にかられる時間が必然的になくなり、合間の時間が貴重になるため、その時間を有効に活用し、「この時間中にこれを仕上げておこう」という意識を持って勉強すると、自然と集中力が高まります。また、そこまでやれば、「せっかくここまでがんばったのだから、合格しないと割に合わない」という気持ちも生まれ、気付いたら、間に合わないなんて思わなくなっていることでしょう。



この時期は、模試で全国トップになった人ですら、不安と闘っているのですから、誰もが一度はブルーになることもあるでしょう。大切なのは、ブルーになっているのは自分だけではないことに気づくことと、その状態からどう脱却し、どう前向きに取り組むかです。楽しいことばかりの人が前向きになれるのは当たり前です。こういう時に前向きになることに意味があるのです。そして、そのための努力をすることこそが、大学受験の大きな意義の1つなのです。ぜひ最後まで自分を信じてがんばってください。

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