勉強法について

あらかじめお断りしておきますが、ここで提唱する勉強法というのは、いわゆる「やす式○○勉強法」といったものではありません。一言で言いますと、「高校の先生や予備校講師は世の中に大勢いますが、そうした人たちの誰もが勧める、いわば『最大公約数』の勉強法をご紹介し、これに私なりにコメントする」というものです。・・・そう言うと何か期待はずれに思われる方もいるかもしれません。でも、私も一応大学受験界に身を置いている者ですので、私なりに、「オリジナルの勉強法を提唱するより、この方が合格の可能性がある」と信じてのことです。そこで、まずはなぜこういう形で勉強法をご紹介するのかについて、私の考え方をご紹介いたします。

世の中にはありとあらゆる「勉強法」が存在し、受験本や受験雑誌、ブログやメルマガなどで紹介されています。それぞれが「○○(提唱者名)式●●(その勉強法を象徴するインパクトのある言葉)勉強法」などと銘打って、中には学習教材になっているものもあります。でも、私の基本的な考え方は、「万人に共通の勉強法はない」というものです。これは、参考書や問題集選びの際も同じで、例えば、皆さんが早慶志望者だとして、「早慶に行きたければこれがいいよ」とある問題集を勧められたとしても、勧められた時点での皆さんのレベルと、その問題集のレベルとが合っているとは限りませんし、時期によっては、それをやるよりも、むしろ赤本を繰り返したほうがいい、という場合だってあるのです。

でもその一方で、「○○式●●勉強法」の提唱者やカリスマ講師に限らず、あらゆる予備校講師や、私のような予備校職員、しいては高校教員まで、受験に携わっている立場であれば、誰もが共通でおすすめしている「基本中の基本」の勉強法もあります。もちろんそういった人たち全員にアンケートを取ったわけではないので、「誰もが」は言いすぎかもしれません。でも、私が受験生だった時のことから、職場の講師や先輩職員の話、実際に生徒と接してきた経験や、私が今まで読んできた受験本などを総合した上で、「これは誰もが共通でおすすめしていることだろう」と感じたものについてをご紹介しようと思っておりますので、必ずしも私の個人的な意見だけが強く入っているわけではありません。

ですので、「どう勉強していいかわからない」という方は、まずはこれらを参考にして、「必ずやるべきこと」を確認してください。その上で、もし参考書や受験本、あるいは現在教わっている高校の先生や予備校講師などのうちの誰かの提唱した勉強法で、「これは自分に合っているかもしれない」と思うものがあれば、それを採用してみてください。そうでないと、うわべだけのテクニックの追究に終始することになりかねません。実際、勉強法を紹介したものの中に、理由を述べた上で、「これさえやっておけばこの科目は大丈夫!」といった表現を使っていることがよくありますが、「これさえ」の「これ」って、毎日続けるのは結構大変なことが多いのです。ですので、そこでつまずくと「それなら従来の基礎事項を最初からきちんとやっておいた方がむしろ早かった」ということになり、取り返しがつかないことにもなりかねないのです。

ところで、皆さんにも覚えがあると思いますが、同じ科目の先生・講師なのに、言っていることが違う、と感じたことはありませんか? 例えば英文読解の授業で、「予習する時には、必ず全訳をしてくるように。1時間では無理なら2時間、2時間でも無理なら3時間かけてもいいから、きちんと丁寧にやるように。授業中に『当てる』からそのつもりで」などという先生・講師がいるかと思えば、「全訳だけに膨大な時間をかけると、他のことができなくなるので、予習時には、制限時間内で最後の設問までちゃんと解く練習をし、単語の意味をしっかり調べ、どこがわからないかをはっきりさせて授業に臨めばよい」という先生・講師もいます。

確かに、同じ高校や予備校の中に、全く違うことを言っている先生・講師がいることに、戸惑いがあるかもしれませんが、これはごくごく当然のことです。たまたま同じ組織の中にいるというだけで、先生・講師1人1人は全く別の人間で、それぞれがそれぞれのやり方でその科目をマスターし、どうすれば成績が上がるか、どうすれば志望校に合格できるかを追究してきているのです。元々その科目が得意で、それを生かして今の立場にいる人もいれば、昔は苦手でも、あることをきっかけにできるようになり、その経験を生かそうとして、今の立場にいる人もいるのです。ですので、言うことが違っていて当たり前なのです。ただ、こうした先生・講師によって意見が分かれるものについては、このページの趣旨の都合上、ご紹介するのを控えさせていただきます。ちなみに私なら、国公立大など、記述式の問題が出題される大学を受験する生徒には、どこかで全訳をやる機会をもつことをお勧めしますが、予習時ではなく、復習時にやってほしい、と言っています。・・・というように、この問題だけでも三者三様なので、どれを採用するかは皆さんに決めてもらうしかないというわけです。

でも、ある点では全く違うことを言っている一方で、別のことについては同じことを言っていることも必ずあるはずです。だからこそ、その共通していることについては最優先でこなしてほしいですし、違うことを言っていれば、どのやり方が自分に合っているのかを判断し、合う方を自分の勉強に採用し、自分なりの学習スタイルを確立してほしいのです。

以上が、私がこのHPで取り上げます勉強法の基本スタンスです。ただでさえ、いろいろな勉強法が世に出回っている上に、身近な先生・講師によっても違うことを言われる、ということが起きているのに、さらに「やす式勉強法」を参入させて競うというのでは、かえって混乱を招きます。そこで、僭越ではありますが、ちまたにある勉強法をまとめ、「交通整理」をしようと思います。

次に、どの科目の場合でも共通する勉強法についてお話いたします。


1.同じ問題集を何回も繰り返す

これはどの職員・講師でも言うことです。一度やっただけでは、間違えた問題を本当に理解し、今後類似問題がどのタイミングで出ても解けるかというと、かなりあやしいと思います。間違えた問題を、理解し正解するまで何度も何度も繰り返し解き続けることで、初めて定着するのです。特に、よく言えば「新し物好き」、言い換えると「飽きっぽい」タイプの方は要注意です。また、それでも1回は最後の問題まで解き終えた方はまだいいのですが、続かずに途中でやめ、そのころにまた新しいタイプの問題集を見つけ、「こっちの方がわかりやすくてよさそうだ」と思って購入し、何日かはやってもまた続かない、という繰り返しが一番よくないパターンです。とにかく何でもいいので、問題集を購入したら、以前間違えた問題も理解し、解けるようになるまでは、新しい問題集を買わずにやり続けることをおすすめします。

2.30分でも1ページ分でもいいので毎日勉強する

まさに「継続は力なり」です。これも、「5時間勉強する日があるかと思えば、全くやらない日もある」場合と、「30分や1ページしかできない日があっても毎日勉強する」場合とでは、どちらの方が伸びるのかを職員や講師に聞くと、ほぼ全員後者だと答えます。それくらい、毎日継続して勉強することが大切なのです(そういえば、かつてそんなタイトルの本がベストセラーになったことがありますよね)。ただ、毎日やり続けるということは本当に難しいことです。だからこそ、どうすれば長続きするのかを自分なりに工夫し、たとえ短時間でもいいので毎日続ける努力をしてほしいのです。すぐには手ごたえを感じないかもしれませんが、3ヶ月、6ヶ月、・・・と続けていくと、その成果のほどを目の当たりにする時が来ると信じて、毎日続けてください。

3.基礎が不十分なら、中学レベルの内容から復習する

これは、難関大を目指す方ほどやってほしいことなのですが、そういう方ほどやりたがらないことです。でも、私は今までずっと勧めてきましたし、私の職場の講師だけでなく、全国的に有名な講師も同じようなことを言っていたのを聞いたことがありますので、あながち間違ってはいないと思います。中学レベルの英文法や数学の問題集、さらには図や写真・イラストなどが豊富な理科の参考書、小中学生向けの歴史マンガなど、あらゆるものを活用して基礎を固めてください。県内ではもちろん、全国的にも有名な難関高校に合格(もしくは難関私立中学から進学)した生徒でさえ、中学レベルの内容が100%完璧とは限りません。その内容が不十分であれば、高校レベル、大学入試レベルの問題を解くにあたり、大きな「ツケ」として回ってくることは目に見えています。さすがに秋以降は難しいかもしれませんが、夏休みまでなら取り組んでもまだ間に合います。また、大半はスラスラ解ける問題だと思いますので、基礎が不十分だと自覚していたり、毎回同じようなところで間違えた経験があったりするようであれば、思い切って中学レベルの問題からこなし、土台をしっかり固め直してみてください。そうすれば、結果的に「急がば回れ」で、難関大レベルの問題でもだんだんこなせるようになってくるでしょう。「基礎をおそろかにする者は基礎に泣く」ことを肝に銘じ、一時プライドを捨て、だまされたと思ってやってみてください。時間はさほどはかからないはずです。

4.できる問題からこなし、できない問題にこだわりすぎない

限られた時間内で出来る限り得点を稼ぐ必要のある模試の時ですら、問題の順番通りに解くことにこだわるあまり、わからない問題で時間を超過してしまうので、普段の勉強の時にはなおさらできない、という方が少なからずいます。でも、それでは時間をかける割にはかどらず、時間がもったいないと言わざるを得ません。予習の時も問題集をこなす時も、できる問題からこなし、一定の時間考えても(私は普段「3〜5分ずっと手が止まったままなら」と言っています)わからない問題は、板書や解答を見て書いて覚え、後日、ノートも何も見ないで、習った・覚えた解答通りに忠実に再現する練習をしてください。


受験生の中には、「何時間かけてでも、自分の力で最後まで解ききってこそ学問の醍醐味だ」という考えを持っている方がいます。その考え方自体は間違ってはいませんが、それはぜひ大学での研究で生かしてください。入試は限られた時間内に1問でも多くの問題を解けるかの競争である以上、その競争に勝つ方法から導き出した時間のかけ方なり勉強法でなくては入試は突破できません。つまり、大学での勉強とは優先順位が違うのです。理系で、しかも真面目な方ほど陥りやすいので要注意です。もし、順番通りにこだわってしまうのは、飛ばした問題に再挑戦するために空けておくノートのスペースの大きさがわからないことが理由であれば、これを機会に、たとえ下に大きな余白ができたとしても、「1つの大問につき1ページ(授業の予習なら、見開き2ページ分確保し、左上のページから解き、右側は板書用に取っておく)」というようにすると、わからなくて飛ばした問題があることが気にならなくなります。「まずはできる問題から解き、どうしてもできない問題は、解答を見てそれを覚える」という学習習慣を身に付けると、限られた時間内により多くの問題を効率よくこなすことができます。頭ではわかっていても、すぐにできるようになるとは限りません。ですので、常に意識して取り組むようにしてください。

余談ですが、クイズ番組では、正解数が多い回答者ほど、1つの問題に固執せず、わからないと思ったらパスして、次の問題に進み、正解できない人ほど、特定の難しい問題に何十秒も費やしてしまい、結局時間切れになる傾向があります。

5.問題集をこなす時は、必ず締切日と1日のペースを決める

誰でも覚えがあると思いますが、「申込書がまだの人は、なるべく早く出してください」と言われるのと、「申込書がまだの人は、明日までに出してください」と言われるのとでは、どちらが記憶に残り、「提出しなければ」とあせる気持ちになるでしょうか? 大半の方が後者だと思います。前者の場合、「申込書を出さなくてはいけない」ことより「早く出さなければいけないが、今すぐじゃなくてもいい」ということの方が、むしろ記憶に残ってしまうからでしょう。それは、前者は締切日を明確にしていないからです。明確であれば、何かのきっかけで「そうだ、申込書を明日までに出さないとまずいんだ」と思い出すでしょう。勉強も同様です。英文法の問題集を「なるべく早く仕上げなければ」というのと、「6月末までに仕上げなければ」というのとでは、全然意識が違います。


締切日がはっきりしていれば、その日から逆算して、1日どのくらいのペースで勉強すればいいのかの見当がつきます。見当がつけば、それをふまえて学習計画を立てることができます。ただがむしゃらにやっているだけでは、自分でもいつごろ終わらせられるかわかりませんので、合格を見据えた学習とは言えない、ただ勉強したこと自体に満足するような、ひとりよ がりの勉強になりかねません。「締切日と1日のペースを決めて実行する」ことは、受験だけでなく、大学でも社会人になっても通用する「世の中の基本」です。そう思ってやってみるといいと思います。

6.学習における優先順位を決め、順位の高い順に勉強する

根本的なことで言えば、明日あさってまでに仕上げるべき予復習や学校の宿題を「後でやる」とばかりに先送りし、いつまでもテレビやゲームに夢中になっているケースは有名です。科目で言えば、定着に時間のかかる英数を他科目よりも優先的にこなしたり、レベルで言えば、難関大で出題される難問に対応できるようにする前に、まずは徹底した基礎固めをするなど、勉強する上でも優先順位があり、順位が高い順にこなすことが重要です。また、高1高2までは、受験における「武器(得点源)」の確保と学習スタイルの確立を兼ねて得意科目を伸ばし、受験生になったら、足を引っ張らないためにも早いうちに苦手な科目や単元を克服するというのも、多くの予備校講師や先生が提唱していることです。


でも実際には、優先順位が高いとは思えない内容の勉強の方をむしろ一生懸命やっているとしか思えない生徒が少なくありません。例えば、国公立大志望の方が、センター試験でしか使わない科目を主要科目と同じくらいの比率でやろうとしたり、私立文系の方が英語もそこそこに日本史や世界史ばかりやったり、理系だからといって、英語そっちのけで朝から晩まで数学ばかりやったり、といった具合です。もし自分自身に思い当たることがあれば、勉強する前に自分にとって優先順位の高い勉強とは何かをよく確認し、高いものからこなすくせをつけることをおすすめします。どうつければいいかわからないようであれば、ぜひ予備校職員や講師、学校の先生などに早めに相談するようにしてください。

それでは、いよいよ各科目ごとの勉強法についてご紹介いたします。

英語の勉強法

数学の勉強法

国語(現・古・漢)の勉強法

小論文の勉強法

理科・地歴・公民の勉強法

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