こんな時、どう選ぶ?

思わず首をかしげたくなる予備校は除外したものの、まだ「2校には絞ったもののどちらにしようか?」「こういう予備校とこういう予備校とではどちらがいいの?」といった迷いが解消しきれない場合もあるかもしれません。そこで、よくある例をご紹介するとともに、その場合、どういう基準でどう選べばいいかをご提案したいと思います。


1.ライブ(一斉)授業中心の予備校と、映像授業中心の予備校

かつては学校でも予備校でも、授業(講義)といえばライブ、つまり教室での一斉授業が当たり前でした。1クラスの規模は、小中高校では40人前後、予備校や大学では、大教室で100〜200人の生徒を相手にすることも珍しくはありませんでした。それが、少子化の流れもあり、一昔前から「少人数制」がうたわれ、予備校や大学でも、1クラスの人数が2ケタ代というのも普通になってきました。また、小中高校では20〜30人ですが、それくらいの規模のクラスがある大学や予備校すら出てきています。

ところがさらに時代が進み、今では講師の授業を撮影・編集し、「映像授業」としてライブ授業の代わりに見せたり、ライブ授業と並行して活用したりする予備校が出てきたのです。もっとも、こうした動きは以前からあり、大手の予備校では、本部校での授業を衛星中継し、他校にパラボラアンテナを立てて送信し、衛星授業を受信した各校に所属する生徒に受講してもらうという試みが行われていました。予備校により「サテライト」「サテライン」など、名前は微妙に異なりましたが、仕組みは同じでした。それが今では、中継ではなく特設スタジオにて撮影された映像を、DVD化したりインターネット上に載せたりすることで、どこの校舎の生徒でも、いつでも何回でも自由に見られるようなシステムになっているのです。そして、こうした映像授業を中心とした予備校は年々増加傾向にあります。

それでは、自分の自宅や高校の近くに、こうした映像授業中心の予備校も、従来型のライブ授業中心の予備校もあり、自分の意思でどちらにも通える環境下にあるとしたら、どちらを選べばいいのでしょうか? そうした迷いのある方のために、映像授業のメリットと難点を、それぞれ1つ1つ例を挙げながら見ていきましょう。


映像授業のメリット

映像授業のメリットを一言で言えば、「教育の機会均等」ということに尽きます。つまり、あらゆる立場の生徒でも、取りたい講座を受講できるということです。ただ、これには幅広い意味と数多くのケースがあります。ここでは、その点について具体的にみていきたいと思います。


1.立場や状況に応じて、各自の都合の良い時間で受講できる

これがいわば映像授業最大のメリットと言えるでしょう。都合の良い時間というのは人それぞれで、全く同じ人はいないと言っても過言ではありません。浪人生であれば、高校の授業がない分、いわば1日中いつでも受講できるでしょう。これが高校生になると、まず高校ごとにカリキュラムや時間割が異なるため、高校間で差がありますし、高3生と高1・2生とでも違います。また、高3生でも部活をやっている人とやっていない人とで違いますし、部活の中でも、練習時間・練習量・大会及び引退の時期とがそれぞれ違います。ライブ授業の場合、そうした状況をふまえ、高卒生と高校生とでコースを分け、立場の違いに関わらず、高校生ならこの時間帯なら大丈夫であろうという、いわば「最大公約数」を予備校ごとに導き出し、それをふまえた日時で時間割を組みます。そして高校生は、そうした予備校の時間割に自分を合わせるような形で授業を選択しますが、それにはやはり限界がある点は否めません。

その点、映像授業であれば、朝10時から見たい高卒生は10時から、部活のない高校生は15時から、学校行事等で忙しい時期は18時から、部活組は20時からなど、自分にとってベストのタイミングで見ることができるのが魅力です。

2.繰り返し受講ができる

これも大きなメリットです。例えば苦手な単元であれば、いくら受講後に復習するにしても、1回受講しただけでは理解しきれない場合がありますし、復習時に、聞き漏らしやノートを取り忘れが発覚することもあります。でもライブ授業であれば、友人のノートを頼るしかありません。もっとも、担当講師に直接質問するのがベストですが、講師は毎日同じ校舎にはいませんので、タイミングを逃すと面倒くさくなり、ついついそのままにしてしまいがちです。その点映像授業なら、たとえわからなかったり聞き漏らしたりしても、再度受講することが可能ですし、該当するところまで早送りして、すぐに確認することができます。

また、理解不十分な点や聞き漏らしにすぐに気付いた場合、ライブ授業であれば、その場で講師に「すいません、もう一度お願いします」と聞き返さなくてはいけませんし、それができる雰囲気ではない場合もあります。そうなると、精神的に弱い生徒であれば、「ついていけない」「置いてきぼりにされた」という気持ちが強くなり、やがて孤立して心が折れ、通学する意欲が低下するリスクがあります。もっとも、個別指導や少人数制授業を提唱する予備校であれば、そういう生徒へのフォローも行き届いてはいますが、少なくとも映像授業であれば、すぐに一時停止して巻き戻せばすぐに確認できます。こうした利便性は、映像授業が持つ大きな魅力であると言えます。

3.どの講師の講座も受講できる。また、講座が締切になる心配がない。

校舎が複数ある予備校のライブ授業の場合、たとえ人気があって評判の高い講師がいても、所属する校舎に出講していなければ受講できません。出講する校舎さえわかれば、その講師の授業がある日に他校舎で受講する方法もありますが、あくまで距離的に可能な場合の話です。まさか札幌校の生徒が新宿校に毎週通うわけにはいきません。また、人気講師による特設ゼミや夏期・冬期の講習を申し込む際、申込受付初日のわずか数時間の間に定員を満たし、締切になることがあります。でも、高校生の場合は学校や部活があるため、早くから順番待ちできるとは限りませんし、高卒生でも絶対取れる保証はありません。人気講師の授業が絶対ではないとはいえ、取りたい講座が取れないだけでモチベーションが下がることもあるので、無視するわけにはいきません。

その点映像授業の場合、各自が所属校舎からアクセスするだけですので、基本的には各予備校で揃えている全ての講座を受講することができますし、全員同じ講座を視聴することも可能ですので、講座が締め切られることはないはずです。

4.受験生が少ない地域に住む人でも受講できる機会に恵まれる

受験生は、東京や大阪・名古屋・仙台・福岡などの大都市だけにいるわけではありません。他地域よりも多いことは確かですが、過疎地にも離島にもいる可能性はあります。ただ、予備校はボランティアでも公共機関でもなく、あくまで民間のサービス業です。ということは、他の業界同様、採算が取れる地域でないと開校したくでもできません。だからと言って稚内の受験生が札幌校に、小笠原の受験生が新宿校に通うことはできません。

その点映像授業の場合、映像授業が見られるような環境さえ整えば、小規模でも開校可能ですので、わずかなニーズを拾うことができます。また、地元に密着した塾や予備校と提携すれば、新規開校しなくても、地元の塾・予備校で、大都市でしか受けられないはずの授業の映像を見ることもできます。

5.全く同じ講座を受講する場合で比較すると、ライブ授業より安い

保護者の方の視点で考えると、これは見逃せないメリットです。当然ながら、安い理由は人件費の差です。例えば、A先生による「早大対策英語」という講座を10校舎にて開講し、各校に所属する生徒がそれぞれ受講するとします。ライブ授業の場合、10校舎とも全く同じ内容の授業ですが、当然ながら講師への報酬は10校舎分発生します。

その点映像授業の場合、10校舎どころか全校舎に配信でき、全校舎の生徒が視聴できる上、A先生に直接報酬が発生するのは収録時だけです。もっとも、幅広く活用できますので、収録時にその分報酬額を上積みするか、今後言わば「マージン」に相当する額を支払うかになるとは思います。それでもトータルで考えますと、予備校側にはコスト削減になりますし、今後校舎を増やしても、講師への報酬もその分増えるわけではありません。むしろ、校舎も受講者も増えれば増えた分だけ利益になりますので、たとえ収録時の報酬が高くても、その後マージンが発生しても十分元が取れるのです。そのため、料金を安くすることで、皆さんにもその分を還元することができるのです。講師にしても、自分の授業が全国に配信されるのは大きな誇りになるでしょう。これが、映像授業を行う予備校が年々増えている原因の1つと言えます。


映像授業の難点

これだけ映像授業がメジャーになりつつある昨今ですが、大手だけでなく、中小規模の予備校でもまだライブ授業が行われてところは多いです。やはり教育はface to face が基本であり、たとえニーズが減ることはあっても、その価値観が薄れることもなくなることもないと思います。そういう意味では、映像授業の難点というのは、言わばメリットの裏返しでもあります。そこで、どちらでも選べる環境にある方向けに、映像授業の難点についてご紹介いたします。


1.「強制力」がないため、結局ほとんど受講できずじまいになるリスクがある

映像授業最大の難点はこれです。ライブ授業であれば、例えば毎週月曜日の夜8時からの授業を取っていれば、たとえ部活が終わってやや疲れ気味だとしても、「あっ、今日は予備校のある日だから、8時までには行かなくちゃ!」という意識が働くため、多少無理してでも重たい腰を上げて予備校に行こうとするでしょう。でも、映像授業であれば、別に8時でなくてもこの日でなくても視聴できるので、「今日は疲れたから明日にしよう」などと言って先送りしかねません。これがこの日だけならいいのですが、今後こうしたことが繰り返されると、見るべき映像授業がどんどんたまっていきます。これが通信添削であれば、日々山のようにたまった課題を目の当たりにするため、いつかは何とかするかもしれませんが、いかんせん映像では、そうしたリアル感がないため、結局ほとんど受講しないまま終わるリスクがあります。

また、これは学習習慣にも影響します。月曜日に授業があれば、たとえ日曜日に部活の試合があっても「明日は授業だから予習しなくては!」「先週の復習をしておかなくては!」という意識も働くでしょう。でも、映像授業なら明日絶対視聴しなくてはいけないわけではないので、予復習も先送りしてしまう可能性があり、学習ペースが部活や体調に左右され、結局やったりやらなかったりになり、成績が伸び悩むリスクがあるのです。これを克服するには、余程強い意志がないと難しいと思います。

2.臨場感に欠け、単調になりやすく、最後まで見きれない場合がある

映像授業の場合、face to face ではなく画面とのにらめっこになるため、どうしても臨場感に欠けます。そのため、たとえまじめに視聴しても、回を重ねるにつれてどうしても単調になり、集中力が散漫になってしまうリスクがあります。また、映像授業の大半がスタジオ収録で、その場には生徒がいないのに、いると見立てて授業が行われることも、臨場感に欠ける理由の1つです。もちろん講師は慣れているため、さも目の前に生徒がいるかのような、迫力のある授業をするとは思います。でも、たとえ迫力があっても、その場に居合わせた時の緊張感や興奮度にはかなわないため、臨場感を出そうとしても限界があるのです。それは、先生役のベテラン俳優による授業シーンでも、本物の先生の授業にはかなわないのと同じです。

3.ライバルの存在を実感しにくいため、張り合いがなくなり、孤独感に
  さいなまれたり、「井の中の蛙」になったりしかねない

ライブ授業の魅力は、ライバルと一緒に授業を受けることでその存在を目の当たりにし、常にライバルを意識することで競争心を煽るような、啓発される環境が与えられることです。そのため、たとえ集中力がとぎれそうになっても、「自分が今こんな状態でも、あいつはもっとやっているはず。自分も負けてはいられない!」という気持ちになり、体勢を立て直すことができるのです。

でも映像授業の場合、やむを得ないといえばそれまでですが、画面とのにらめっこになるため、その映像授業が全国の、いやそれ以前に、同じ校舎の誰がいつ視聴しているのか、その人がどれくらいの学力があり、どの大学を目指しているかすらわかりません。そのため、そもそもライバルの存在を実感する機会がないため、競争心を煽られることもなく、徐々に張り合いがなくなってくるリスクがあるのです。元々対人関係が苦手で、PCやテレビの画面とのにらめっこの方が合っている人ならともかく、そうでなければだんだん孤独感にさいなまれたり、競争相手を意識できない分、「井の中の蛙」になり、自分を過大評価してしまい、このまま普通にやれば難関大でも合格できるかのような、傲慢な気持ちで勉強することになりかねません。もっともライブ授業では、ライバルを意識できる反面、友人とつるむリスクもあります。でも映像授業にしても、もし友人同士で入学した場合、映像授業の単調さと人恋しさに耐えられず、授業時間に縛られない分、かえって友人とのおしゃべりに延々と花を咲かせるリスクもあるのです。

4.授業内容についてのタイムリーな質問を、講師にすることができない。
  たとえ質問自体はできても、大学生のアルバイトの可能性がある。

全く同じ講師による同じ内容の講座であれば、人件費の差により映像授業の方が単価が安いという話をしましたが、これは、各校舎に講師を呼んで授業をしなくても、生徒は授業を受けられ、勉強できるということです。ということは、各講師は、視聴する日時もペースも異なる生徒一人ひとりの、タイムリーな質問には対応できないということです。そのため、映像授業を行う多くの予備校では、質問をFAXやメールなどで受け付けますが、全校舎からの質問を一斉に本部で受けるため、解答が戻ってくるのに数日かかることもあります。ただ、さすがにそれだけでは限界があるので、校舎ごとに質問を受ける担当者を当番で置いていると思います。これが、地元の予備校と提携していれば、そこの講師が対応できますが、そうでなければ、おそらく大学生のアルバイトが対応すると思います。それが100%ダメとまでは申しませんが、スキルの差による当たり外れが激しいことは確かです。


いかがでしょうか。皆さんにはどちらの方が合っていると感じられたでしょうか? 私は個人的には今でもライブ授業の方が良いと思ってはいますが、映像授業の魅力も捨てがたく、併用するのがベストだと思っています。そういう意味では、私が受験生の子を持つ親なら、併用できるシステムを持つ予備校を選ぶと思います。よかったら参考にしてください。



2.高校生限定の予備校と、浪人生もいる予備校(高校生の場合)

高校生限定の予備校は、近年の現役合格志向による浪人生減少という、ニーズの変化だけでなく、浪人生対象が当たり前だった予備校が、高校生コースを開設した際、浪人生のカリキュラムをそのまま高校生に当てはめようとしたことで無理が生じたことや、朝から来て自習室や空き教室を占領したり、校内のあちこちでたむろするなどして、雰囲気を乱す浪人生から高校生を守る目的などにより誕生したと言われています。「現役高校生のための予備校」と銘打つ以上、浪人生がいない分居心地が良いなど、高校生にメリットがあるのは当然ですが、最近はほとんどの予備校が高校生に力を入れていますので、極端に差はないと思います。しいて言えば、AOや推薦など、高校生有利な入試の対策は、高校生限定の予備校の方が優れているでしょう。ただその一方で、「選ばなければどこかの大学には入れる今だからこそ、もう1年かけてでも難関大学をめざしたい」という浪人生が増えていますので、そうした浪人生に啓発される経験が、高校生に重要な意味を持つメリットもあります。

尚、高校生限定の予備校の難点を挙げるとすれば、まずは開館時間の遅さです。多くの予備校が朝から開いているのは、浪人生の授業があるからです。高校生限定なら、お昼過ぎまでは開ける必要がないのです。ということは、定期テストの時期や行事の振替休日、入試直前期、その他朝から利用したい日があることが前提なら、浪人生がいる予備校の方が使い勝手がいいかもしれません。また、万一浪人が決まり、今までお世話になった講師や職員に引き続きお世話になりたくても、高校生限定の予備校では不可能です。現役合格最優先の方や、落ちたのに同じ予備校はいやだという方ならともかく、「たとえ1浪してでも早稲田に行きたい」などと考えている方は、予備校を探し直す可能性があることを念頭に置いてください。いずれにしても、一長一短がありますので、高校生限定かどうかは必ずしも最優先条件にまでしなくてもいいのではないかと思います。


3.体験授業を受けてから入学した方がいいか?

普段の授業のようすや、自分に合うのかどうかが実感でき、雰囲気を味わう意味でも、機会があれば、体験するに越したことはありません(だからこそ私の職場でも行っています)。ただ、上述の通り、入学しても体験授業の時の講師に教わるとは限りません。それに、どの予備校にも「体験授業用」の講師がいます。つまり、「この講師の授業なら、受けた人は入ってもらえるだろう」と安心して送り出せる、安定感のある講師が担当するものです。ですので、中身を過信せず、よかったからと言って、どの講師とも合うとは限りませんし、体験授業で合わなくても、その予備校自体が合わないとも限りません。あくまで、判断材料が増えるぐらいの気持ちで体験してみてみてください(もちろん同じ理由で、どの講師とも合わないとは限りませんが)。またこれは、大学のオープンキャンパスでの模擬授業も同様です。


4.学費は一括制より月謝制の方がいい?

月謝制の方が支払いが楽で便利な反面、「合わなければその月でやめればいい」と考えてしまうと、頑張って継続しようという気持ちをそぐことがあります。一方で、一括だと支払いは大変ですが、その分「せっかく大金を払って(もらって)入学したんだからむだにしないよう、しっかり勉強しよう(させよう)」という気持ちが継続への動機付けになります。尚、たとえ一括払いが原則でも、分割ができたり、退学時にそれ相応の返金があったりする予備校もありますし、その他推薦やAOで合格した場合や、けがや病気など、やむを得ない場合には、何らかの救済措置がある場合もあります。気になる方は、事前に確認しておいた方がいいでしょう。


5.それでも迷っている方へ・・・

全ての条件が揃う予備校はない以上、それぞれの重要視する判断基準に従って選ぶことになるとは思いますが、もしそれでも迷っているのであれば、最後の決め手になるのはやはり「人」ではないでしょうか。具体的には、職員や講師が親切・丁寧かつ熱心で、信頼できると感じたか、ということです。そういう予備校には、入学したいと思わせるような活気があり、職員や講師1人1人が良い雰囲気を作り出しています。ちなみに、このことは決して人事ではありません。私も肝に銘じ、日々努力したいと思います。また、「人」が決め手という意味では、候補の予備校に通っている友人に話を聞き、その友人からの紹介、という形での入学もおすすめです。実際に通っている人に聞くと、学校説明とはまた違う視点からの話をしてくれるでしょう。何よりその予備校に、何らかの魅力があるから通っており、人にもすすめるはずだからです。

inserted by FC2 system