「合格」につながる模試の活用法

第一志望校合格のために日々がんばって勉強していることと思いますが、果たして本当に実力がついているのか、そしてその実力を大学受験本番で出し切れるかどうかについては、誰もが気になるところです。そういう意味では、客観的な数字上で結果が出せるかを試してみる上では、模擬試験の定期的な受験は欠かせません。ところが、普段から受験生と接していますと、ただ受験しているだけ、受けっぱなしにしているといった生徒が少なくないのです。でもそれではもったいないと思います。せっかく受験するのですから、模試を二次・三次活用することで、合格につなげてほしいと思います。そこで、事前準備や当日注意する点、さらには受験後の生かし方まで、あらゆる角度からの模試の活用法についてのご提案をしたいと思います。

1.1学期〜夏休みまでに2回、9月以降は月2回程度のペースで受験する

模試は、本番に近い形で力を試すことのできる、数少ない機会です。いくら普段の勉強の際に、時間を計って問題を解いているとしても、その分模試を受ける回数を減らしても大丈夫、ということにはなりません。何より、偏差値や志望校判定など、力の伸び具合や自分の現在の位置などがわかるというメリットがあります。ですので、できる限り受験してほしいのですが、1学期から夏休みにかけては、たくさん受けるよりは、基礎固めの方を優先をしてほしいですし、いくら9月以降でも、毎週末に受けるくらいの頻度では受けすぎです。目安としては、1学期〜夏休みまでに2回、9月以降は月2回くらいのペースがちょうどいいと思います。その際、マーク模試だけでなく、ぜひ記述模試も受験してください(私立文系以外の方は特に)。

2.科目ごとに、あらかじめ時間配分を考えておく

模試はあくまで、本番に即して行うからこそ意味がありますので、時間配分もあらかじめ考えておく必要があるでしょう。模試を受けた感想の第一声が、「時間が足りなかった」ではつらすぎます。例えば英語なら、「文法問題は10分、読解問題を各15分ずつ、発音・アクセントは各5分・・・」といった具合です。ただ、このように自分なりに時間配分を考えた上で模試に臨んだとしても、すぐにうまくいくとは限りません。たとえ決めた通りにやってみても、「やっぱり最後の読解問題がどうしても解ききれなかった・・・」ということもあるくらいですから、時間配分を考えずに受けたら、なおさら時間切れになります。それが原因で大量失点してしまったとしたら、非常にもったいないですし、今後への不安材料を残すことになりかねません。オープン模試(○○大学模試)やセンター模試なら、制限時間も出題パターンも同じですので、うまく配分できれば本番にも応用できます。記述模試も、出題形式はどの予備校のものでもさほど変わりませんので、おおよその見当をつけることはできます。各回の模試を十二分に生かすためにもぜひお試しください。

尚、時間配分の際は、「制限時間マイナス10分」くらいで考えてください。10分は予定通りにいかなかった時の調整や、氏名・受験番号などに間違いがないかどうかの見直しのためで、これがあるのとないのとでは全然違います。調整が大変になると思いますが、時間ギリギリで調整すると、予定をオーバーしてしまったときのプレッシャーたるや、想像を絶するものがあります。

3.解く順番も考慮し、わからない問題は飛ばす

模試を受ける際は、時間配分だけでなく、解く順番も併せて考えておいてください。最初の問題から解くことにこだわる必要は全くありません。要は、制限時間内に全ての問題を解けばいいわけです。例えば英語で、発音・アクセントや文法の問題で迷って時間をかけてしまうあまり、読解問題を「駆け足」で解かざるを得なくなり、その分得点がいつも低いようであれば、読解問題を先に解き、配点の高い問題をじっくり解いて点数を稼ぐ、というように考えるということです。一概に言って、迷う問題というのは、時間があればある分だけ、迷う時間も長くなってしまいがちです。こういう問題は、むしろ時間があまりない時に解く方がうまくいくことがありますので、読解問題を全て解き終わってから、残った時間で解く方が結果がよくなるかもしれません。また、たとえこのようにして順番を決めたとしても、先にやる予定だった問題、あるいは設問の一部が難しそうなら、飛ばして先に進んでください。そうすれば、一通り問題が解き終わった段階で、残り時間が「10分+飛ばしたため浮いた時間」だけ余ることになります。そこで、その時間を使って飛ばした問題に再チャレンジしてください。ほとんどの問題を解き終えた後ですから、今度は落ち着いて考えられると思いますので、解き方を思い出すこともあるかもしれません。

4.受験する気持ちがあまりなくても、滑り止めの大学も志望校欄に記入し、
  全国における自分の現在の位置が明確になるようにする

模試の結果表を見るたびに感じるのは、多くの生徒が、上位志望校のみの判定を受けていることです。さらに、例えば第一志望が早稲田だとすると、早稲田だけで2、3学部書く人もいれば、早稲田(政経)しか行きたくないとの理由で、そこしか書かない人までいます。模試の志望校判定は、志望校調査ではありません。一番の目的は、その時の成績では、自分は全国でどの位置にいるのか、あとどのくらいがんばれば合格圏内に入れるのか、などの目安を知ることです。早稲田だけで2、3学部書いたところで、判定で大きな違いが出るわけではありません。たとえ早稲田がE判定でも、例えば立教ならD、日大ならC、帝京ならA判定が出た、といったことがわかれば、自分の位置と今後の課題がよくわかります。あまり行きたくない大学までは書きたくない気持ちもわからないではありませんが、あくまで各回の模試を最大限に活用することを優先して考えてください。滑り止めまではまだ決まっていないという方は、「書くだけ書いてみた」程度の気持ちでもいいので、志望校のレベルより下の大学を、1校でも多く書いて判定してもらってください。たとえそうした大学でも、AやB判定が出ればそれはそれでまんざらでもないと思うでしょうし、そこすらDやE判定だとしたら、よほどがんばらないと志望校合格は厳しいのだということを認識することができます。今後、それをふまえて勉強ができれば、それはそれでいいきっかけになります。

5.受験するたびに、以前解いたことのある種類の問題か、ミスで失点した
  問題はないかを確認し、それらが全て正解ならプラス何点になり、偏差値
  がどのくらい上がりそうかを確認する。

これは、模試の結果を、ただ点数や偏差値を確認するだけで終わらせないためにおすすめの方法です。間違えたりわからなかったりした問題の解答・解説を見て、解き方は合っていたのにケアレスミスをしていたり、「あれっ、この問題は良く見たら、前に授業(や問題集)でやったことがある問題と似ている!」などと感じたりした問題をピックアップし、もしこれらが全て正解だとしたら、点数や偏差値がどのくらい上がるのかをシュミレーションしてみてください。その結果が本来取れたかもしれないの点数、あるいは偏差値ということになります。


とはいえ、たとえ本来取れたはずの点数や予想偏差値が出たとしても、あくまでも結果は結果表にある点数であり、偏差値であり、これが現時点での(厳密には約1ヶ月前の)実力です。ここは勘違いすることなく、また「今回はミスっちゃった」では済ませず、現実の結果を謙虚に受け止め、今後に生かしてほしいのです。そして、私がここで言いたいのは、「模試では、普段取り組んでいる問題とは全く異質のものが出るわけではなく、今まで解いた問題を繰り返し、定着させるだけでもある程度の点数が取れる」のだということを実感してほしい、ということです。同時に、1つのミスが致命的な失点につながりうることの怖さも体験することで、模試ごとに、最後に見直しをするクセをつけ、ミスをなくす努力もしてほしいのです。その上で、最後に残った、解いたことがない種類だったり、解き方や解答が全く思いつかなかったりしたために、全然わからなかった問題こそが、今回の模試の課題、いや「収穫」と言うべき問題です。

点数が取れなかったことは残念ですが、このような問題が、入試本番ではなく、今回めぐり合ったことを「ラッキー」だと考え、今後違う機会で出題されてもちゃんと正解できるように、しっかり復習してください。

6.科目ごとに間違えた問題を必ず解き直す

復習方法についてですが、おすすめは、科目ごとに「間違いノート」を作り、それに間違えた問題を解き直すことです。模試直後に解答・解説で確認するだけでなく、2、3日後、遅くとも1週間以内にもう一度解き直してみてください。その際、たとえ中途半端にスペースが空いたとしても、1大問につき1ページを使ってください。空いたスペースが気になるようでしたら、忘れたために解けなかった公式や単語・熟語などがあれば、併せて書いておくといいでしょう。さらに、数学や物理などでミスをした問題や、その時はミスをしなかったものの、自分はよくミスをするタイプだと思っている方は、計算過程もそのスペースにやった上で、消さずに残しておいてください。消したり計算用紙にやったりすると、また同じようなミスをする可能性がありますが、残しておくと、何より見直しの時に便利です。また、設問の一部を間違えただけだとしても、前の設問とのつながりのある場合は、大問ごと解き直してください。解答・解説を読んでもわからない問題や、何度やり直しても最後まで解けない問題などは、必ず質問してください。さらに、次回の模試や校内の実力テストなどのたびにそのノートを見返し、今後似たような問題が出たら、今度こそ解けるようにしましょう。これを繰り返すと、だんだん結果がついてくるようになるでしょう。

7.点数や偏差値など、結果に一喜一憂しない

高2までと違い、高3からは、既に一通り学習している浪人生も受ける模試を一緒に受けることになります。ですので、もちろん成績が良いに越したことはありませんし、実際、高3生でもちゃんと結果を出す方もいますが、最初のうちは、高3生の成績が良くないのはやむを得ないと思います。それに浪人生は、2学期以降の模試で成績が悪いと、現役生の追い上げを実感したことや、「もう1年は許されない」という気持ちから、現役生には想像できないほどの大きなプレッシャーがかかります。そういう意味では、浪人生が有利なのは最初だけです。また、いくらE判定が出たとしても、ギリギリまでがんばって合格した方もいますし、A判定が出たので「滑り止め」として受験したのに不合格だった、という方もいます。模試はあくまで目安であり、実際は大学ごとに出題傾向が違いますので、入試の結果が模試の結果通りになるとは限りません。ですので、成績や判定が悪いからといって悲観的になったり、良かったからといって合格したような気分になったりするなど、模試の結果に一喜一憂しないでください。もし良かったらこの調子で成績が継続できるように、悪かったら何が原因で、これからの勉強にどう生かすかを考えるきっかけにしてもらえればいいと思います。


尚、誤解されないよう、念のために補足しますが、ここでは、例えば自分の偏差値が40代前半なのに、早稲田にしか行きたくないと考えるなど、自分の実力と、志望校のレベルとのギャップが大きく、模試のたびにE判定が出続けたとしても、最後まで志望校を変えず、無鉄砲に突き進むことをおすすめしているわけではありません。確かに、そのくらいのこだわりも必要かもしれませんが、あくまで自分なりにやるべきことをしっかりやっているつもりなのに、なかなか結果として数字に表れない方に、簡単に諦めたりネガティブになったりしないでほしい、と言いたいのです。ですので、無鉄砲なことと、一喜一憂しないこととは別問題です。悪い成績が続き、志望校の偏差値との差が縮まらないようであれば、志望校を変更したり、しない代わりに「滑り止め」の大学を多めに受験するなどの、現実的な対応が必要です。だからこそ、滑り止めの大学も志望校欄に記入し、自分の現在の位置が明確になるようにすることもおすすめしたのです。

8.理科・地歴公民の論述がある人は、問題文をストックしておく

国公立大の二次試験では記述式の問題が多く、特に理社では、「○○について●●字以内で述べよ」といった問題が出題されることがあります。多くの私大のような、マーク(選択)式での出題ですら、決してやさしいわけではなく、いくら短期集中が効くと言っても、入試で合格点を取るためには、それ相応の努力が必要です。ましてや、上記のような論述形式の問題の対策はなおさらです。マーク式や一問一答形式の問題集をいくらやっても、実際に論述形式で書く練習をかなりやらないと、合格点を取れるようにはなりません。でも、今までそんな練習をしたことがない方がほとんどでしょうから、いくら書こうとしても、たとえ添削してくださる方がいるとしても、何をどう書いていいのかわからないと思います。そのためには何らかのサンプルが欲しいところですが、論述対策の問題集や赤本に掲載されている解答例以外でおすすめしたいのは、形式を問わず、問題集や模試の「問題文」をストックすることです。


例えば日本史で、「江戸時代の農耕史について述べた次の文を読んで後の問いに答えよ。」という問題があるとします。この問題文は、260年近く続いた江戸時代の農耕史について、日本史のプロがポイントをしっかり抑えつつ、簡潔にわかりやすくまとめています。これを利用しない手はありません。専用のノートやルーズリーフを用意し、時代やテーマごとに、写したりコピーして貼ったりして論述問題の見本用にストックしてください。そして、類似問題があればそこから引用するのです。これを繰り返すと早く力がつくと思います。これなら、センター(マーク)模試を、論述対策としても使えます。せっかく受けた模試です。どうせなら二次活用、三次活用を考えてみてください。もちろん、模試だけではなく、問題集でも同様です。


模試の日程について

いかがでしょうか? ぜひ受験する一番近い日程の模試で早速試してみてください。尚、今年度の模試の日程は以下の通りです。学校や予備校指定の模試以外でも、もし個別に加えてみたい模試があれば、各自でお申込みしてみてください。また、結果表が届きましたら、担任や進路の先生、予備校の職員や講師に必ず見せ、講評をもらうようにしてください。

         代ゼミ模試: http://www.yozemi.ac.jp/test/

         河合塾全統模試: http://www.kawai-juku.ac.jp/moshi/zento/index.html

         駿台模試: http://www2.sundai.ac.jp/yobi/sv/moshi/index.html


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