推薦・AO入試について

多様化していると言われて久しい大学入試ですが、ここではその中でも、一般入試よりも早い時期に行われます、推薦入試とAO入試について、その内容及びメリットやデメリットについてご紹介いたします。興味のある方は、すぐにでも資料を取り寄せ、高校の先生に相談するなど、お早めの準備をおすすめします。

1.推薦入試

推薦入試は、原則11月1日から出願を受け付けます。選抜基準は、学業やスポーツ、芸術分野など、大学側が要求する特定分野の成績や調査書などで判断されます。受験生にとっては、一発勝負の学科試験(もっとも最近は、入試日程が複数ある大学の方が多いですが・・・)だけではなく、今までの成績を通じて、3年間一生懸命コツコツ勉強してきた過程を、あるいは、受験勉強とは別に、力を入れて取り組んできた部活や生徒会活動、その他ボランティアなどの活動を通じて、「自分」という人間を総合的に評価してもらえる絶好の機会です

大学側としても、少子化傾向により、どんな大学でもある程度の入学者が集まった時代は終わり、ただ落とすための入試ではなく、「うちの大学でこんな勉強をしたい」と考える受験生を、いろいろな形で評価・選抜したいという気持ちが年々高まっています。さらに高校側としても、1人でも多くの生徒を大学に送り出したいわけですから、推薦入試はそうした三者の思惑が一致した入試形態と言えるでしょう。そのせいか、特に私大では、後述のAO入試と推薦入試とで入学している学生は50%に迫り、その割合はさらに年々増え続けています。また国公立大でも、ほとんどの大学で行われてはいます(東大や京大など、一部の大学は除く)が、私大に比べると、入学者に占める募集人数の割合は少ないです。

<選抜基準>

●調査書
これは、ただ校長の推薦書があればいいというわけではなく、学力的な根拠がなくてはだめだということです。基準となっているのは「全体の評定平均値」と呼ばれるものです。これは、調査書に記載されている「学習成績概評」のことで、要は全科目の高校3年間の成績を5段階評価にしたものの平均値のことです。この値がいくつ以上、といった基準が各大学で決められています。尚、一概に言って、私大より国公立大の方がこの値の基準が高く設定されている傾向にあります。

●志望理由書、自己推薦書
「なぜ当大学を希望し、当大学でどんな勉強をしたいのか」などを所定の用紙に記入し、出願の際に提出を求めるもので、大学によって形式はいろいろです。これを書類選考の際に参考にすると同時に、面接で記載内容について質問されることがあります。特に自己推薦の場合、これが持つ意味は大きいものがあります。

●面接、小論文
試験日当日に課されます。面接は全ての大学で行うと言っても過言ではありません。でも、小論文はないところもありますし、「小論文」と称し、限りなく志望理由書を書かせているのも同然のテーマで書かせる大学もあります。

●その他
部活や、音楽・美術の才能など、学力以外の面での推薦の場合で、芸術・スポーツ系の学部を志望する場合には、実技が課されることがあります。また、英検・漢検・TOEIC・簿記検定などの取得級(例えば○級以上)が要求されたり、それらの学習を通して得た結果・入学後の勉強の意向などを面接で聞かれたりする大学・学部もあります。さらに、国公立大の推薦では、基礎学力をみるためにセンター試験を課す大学と課さない大学とがあります。後者は負担が軽い分、特に人気が高く高倍率になっています。

<主な推薦入試>
(※実際の名称は、大学によって異なることがあります。)

●指定校推薦
これは、大学側が、出願できる高校を指定または依頼している推薦入試のことです。ということは、行きたい大学側が、自分の高校を指定しているとは限りません。指定校の決め方は大学によって違いますが、わかりやすく言えば、「例年多くの学生をその大学に送り出してくれている高校」が指定されるということです。出願基準は高く、少なくとも評定平均値4.2以上はないと厳しい上、各校1名が一般的です。ということは、本番の入試より、高校内での競争の方が厳しいのです。その代わり、校内での競争に勝って選ばれさえすれば、余程のことがない限り合格できます。

●公募(制)推薦
これは指定校とは違い、校長の推薦さえあれば、どの高校の生徒でも出願できます。出願基準は指定校ほどではなく、大学によっては成績基準をなくしたところもあります。その代わりに、その分競争率も上がりますので、出願すれば合格はほぼ確実、というわけにはいきません。また、大学によっては面接や小論文だけでなく、学科試験を課す大学もあります。でも、大抵一般入試より範囲が狭かったり、難易度が低かったりしますので、学科試験自体が大きな負担にならない程度の出題になっています。さらに、大学によっては「併願可」、つまり、他大学も受験でき、結果によっては辞退もできるという、本来ならありえない形式を取る大学もあります。これは、後述の自己推薦や、AO入試でも可能な大学があります。

●自己推薦
指定校や公募が校長の推薦が前提なのに対し、校長の推薦が不要で、自分で自分を推薦する公募推薦を、特に「自己推薦」と呼んでいます。自己推薦では、卒業年度を問わない大学が多いので、浪人生でも受験できます。ただ、出願の際に必要な自己推薦書では、志望理由以外にも、いろいろ事細かに書かされますので、準備が結構大変です。そのため、誰かに添削をしてもらわないと、文章が稚拙だったり、自己アピールが弱かったりして、書類で落ちることにもなりかねませんので注意が必要です。また、大学によっては学科試験を課すところもありますが、内容は上記の公募推薦と同様です。尚、自分自身を推薦するので出願はしやすい代わりに、競争率もその分上がりますので、合格するのは難しいです。

●スポーツ推薦
学業以外の面で推薦されるものの1つです。代表例は、甲子園優勝校のエースが、その実績を買われて強豪野球部を持つ大学に推薦で入学する、といったケースです。ただ、この場合、入学したら、野球部に入るのが大前提で、しかもかなりの活躍が期待されることは言うまでもありません。

●同窓生推薦
これは、特に私立の女子大に多いのですが、家族のどなたかがその大学の卒業生であれば受験資格を得られたり、自己推薦の出願の際、その旨を書類に記載すれば「考慮する」、といったものです。要は大学としては「囲い込み」をしたいわけです。元々その大学が第一志望であれば願ったりかなったりですが、そこまでではなかったり、その大学に進みたい学部・学科自体がない場合は、いくらチャンスがあっても迷うところでしょう。

●宗教推薦
例えば、ミッション系や仏教系の高校が、同じ宗派、もしくはつながりのあるミッション系や仏教系の大学に推薦したり、僧侶の方が、自分や檀家のご子息を仏教系の大学に推薦したり、牧師や神父の方が、自分や信者のご子息をミッション系の大学に推薦したりするものです。これらは、本人がその宗教の信者であることが大前提(学科によっては後継者の育成を目的に、僧侶や牧師・神父になることが前提)ですが、実際は、ご家族や親戚の方が熱心な信者であれば、推薦してもらえることもあるようです。

<メリット・デメリット>

(大学側)
今までは、意欲のある優秀な学生を早期に獲得できることが最大のメリットでしたが、最近では、少子化に伴い、定員確保のために使う学校も増えています。そのため、基礎学力不足の入学者が増えたことがデメリットになっています。そのため、入学前教育や、入学後もきめ細かいフォローが必要になり、かえってお金や労力のコストがかかるのが現状です。

(学生側)
学科試験の科目が軽減、もしくは免除されることが多く、何より、通常の入試時期よりも早い段階で合否判定が行われるため、受験の負担が軽減されるのが最大のメリットです。一方で、特に指定校推薦の場合、合格したら必ず入学するのが大前提なので、その大学が第一志望ならともかく、もしそうでなければ、早期の合格と引き換えに、チャレンジ校への受験機会を失い、さらに中退・転学などがしにくくなるのがデメリットでしょう。もし、そんなことをしようものなら、出身校は信頼を失い、推薦枠を失うでしょうから、後輩にも多大な迷惑がかかります。


興味のある方は、以上のことをもとにご検討ください。ただ、指定校推薦の場合、1学期のうちに、取れるかどうかの見込みを先生に聞けば、ある程度は教えてもらえるでしょうし、その時点で「厳しい」と言われればおそらく難しいので、断念せざるを得ないと思います。でも、それ以外の推薦なら、2学期以降でも間に合うものもあります。


2.AO入試

AO入試というのは、出願者の人物像を、大学側の求める学生像(これをアドミッション・ポリシーと言います)と照らし合わせて合否を決める入試のことです。元々はアメリカで始まった入試方法で、現在もカナダやイギリスなどでも盛んに行われています。学科試験で合否が決まる従来の一般入試と違い、志望理由書や小論文、レポート、面接などにより、出願者の個性や適性について様々な面から評価する、いわばプロセスを重視する点が特徴です。その一方で、難関大のAOほど、準備に時間がかかることが多いため、一般入試との併願はしにくくなっています。ちなみに、亜細亜大学等が行った「一芸入試」とAO入試とは違います。あくまで学生を様々な面から評価することが目的ですので、ある一面だけが優れていても、総合評価で合格するとは限らないからです。

日本では、1990年(平成2年)に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(以下SFC)の総合政策・環境情報の2学部が導入したのが初めてです。90年代までは、実施大学はほとんどありませんでしたが、2000年以降から急増し、今では約600校の大学、それも国公立大学までが実施しています。

<推薦入試との違い>

日本のAO入試は、アメリカの制度をアレンジした独自のもので、アメリカのAOとは似て非なるものです。そのため、アメリカのAOと区別するため、よく「日本型AO入試」などと言われます。アメリカのAO入試は、いわば、「入試事務局(AO)による、素質ある高校生を全国の高校から探してきて入学させる、スカウト活動を伴う入試」というものです。ですので、例えば「将来大統領になりうる人物」とか、「ノーベル○○賞を取りうる人物」など、どの大学もスカウト対象者、つまり「アドミッション・ポリシー」がはっきりしているのです。

一方、日本のAO入試は、大学により呼び方こそ違いますが、ほとんど自己推薦入試と変わりません。指定校推薦や公募推薦と区別するため、単に自己推薦をAO入試と呼んでいる大学が多いのが現状です。ただ、しいて違いを挙げるとすると、次のようになります。

●浪人生や社会人でも出願できるケースが多い
  大学によっては、自己推薦入試なら出願できるところは多いです。ただし、原則として高卒または高認試験合格の
  資格は必要です。

●出願時期が早い。
  推薦入試は、原則11月1日からしか出願を受付することができないのに対し、AO入試では、今までは時期に関係なく
  欲しい生徒を獲得するためにAOを実施しているのが本音、という大学が少なからずあり、これが一番大きな違いでした。
  でも、、2011年度入試からは、原則8月1日からしか出願を受付することができなくなりました。そのため、
  以前ほどの違いはありませんが、これからも、推薦入試よりも早い時期から生徒を獲得できる点では同じです。

●学校の成績(評定平均)は問われないことが多い。
  あくまで、一般の学科試験だけでは判断できない面を重視した入試ですので、当然と言えば当然でしょう。

●併願が可能な大学が多い
  募集要項には、一応「入学を確約できる者」という条件が付いている大学が多いですが、現実には学校長の推薦状が
  必要となる推薦入試ほどの拘束力はないのがほとんどです。最近では、推薦入試でも「併願可」の大学もありますが、
  あくまで単願が原則なので、これも大きな違いと言えるでしょう。

<選抜基準>

これは推薦入試とほとんど変わりません。調査書、志望理由書・自己推薦書、面接、小論文などは共通しています。ですので、ここではAO入試ならではのものをご紹介いたします。

●エントリーシート
  出願をする際に、自己アピールしたものを所定の用紙に書いて提出を求めるもので、大学によって形式は様々です。
  これを書類選考の際に参考にすると同時に、面接で記載内容について質問されることがあるため、これが持つ意味は
  大きいものがあります。

●課題レポート
  出願の際に提出を求める大学が多く、例えば日本初の慶大SFCでは、「大学で取り組みたい研究テーマとその方法」
  が課題でした。これは、学生の能動的な研究態度を問うもので、後の「日本型AO入試」の原型になりました。

●面接
  これは推薦入試でもありますが、時間が推薦入試より長いことと(20〜30分くらい)、複数回行う場合がある点が、
  推薦入試との大きな違いですので、補足をしておきます。

●グループ討論
  特定のテーマをもとに、受験生同士が討論し、結論が出るまでの過程を採点し、合否を決めます。今まで、あまり他人
  と討論や議論をしたことがない方は、世の中で何かが問題になるたびに、それについて、「自分はこういう理由でこう
  考える」という、自分なりの意見を持つようにするなどの準備が必要です。ただ、あくまで討論を通じて受験生の
  人間性を見るものですので、テーマは必ずしもその学部で学ぶ内容とは限りませんし、討論の結論がどうなったかも、
  合否とは関係ない場合が多いです。

●プレゼンテーション(以下プレゼン)
  特定の課題について、採点官の前で自分の意見を発表するもので、これもAO入試ならではのものです。例えば、出願時
  に提出を求めた課題レポートの内容について何らかの発表をしたり、当日までにプレゼンをするための資料を用意し、
  当日プレゼンを行った上で、その資料も提出したりする、といったやり方です。このように、プレゼンを行うには、
  それ相応の準備が必要ですので、この点が、一般入試との併願が難しいとされている理由の1つです。

●その他
  実技や、英検・漢検・TOEIC・簿記検定などの取得級などが、合否の判断材料になることは、推薦入試と同じです。
  尚、これらはどの大学でも必要というわけではありません。志望理由書、面接、小論文のみの大学もあれば、
  小論文がない代わりにプレゼンをさせたり、グループ討論を含めて面接を3、4回行ったりするところもあります。
  また、学科試験を課す大学もあります。

くどいようですが、とにかく、大学によって本当にやり方が違いますので、興味がある方は、必ず募集要項で大学ごとに必ず確認をしてください。

<メリット・デメリット>

(大学側)
本来は、推薦入試同様、意欲のある優秀な学生の早期獲得がメリットでしたが、実際は、一部の難関大を除き、推薦入試よりも早い時期(11/1以前)に、入学者を確保できるメリットを生かす(要は大学経営の安定のための青田買い)大学が多いのが現状です。そのため、そういう大学ほど自己推薦に近い形式になり、結果として、合格基準やアドミッション・ポリシーは有名無実化してしまい、基礎学力不足の学生の入学がなおさら増え、その分入学前教育や、入学後のきめ細かいフォローなどで、さらにコストがかかってしまうことがデメリットです。

(学生側)
推薦入試と同様、AOでも、学科試験の科目の軽減や免除があり、一般入試よりも早い段階の合否判定などで、受験の負担が軽減されることがメリットでしょう。また、推薦入試と違い、元々認めている大学を含め、併願が事実上不可能ではありませんので、表向きの姿勢はともかく、合格した大学への入学が大前提とは言いきれません。そのため、早期の合格を「押さえ」として、よりハイレベルの他大のAOや、「チャレンジ校」の一般入試の受験も事実上可能といえます(もちろん返ってこない納付金はありますが)。これはいわば最大のメリットです。一方で、本当に行きたいと思うレベルの大学のAO入試ほど、準備に時間がかかる上、合格も難しく、一般入試との掛け持ちが困難なのがデメリットです。最悪な場合、AO入試で不合格になった上に、AOの準備期間中に一般入試の勉強が進まず、結局そのことが影響して、一般入試でもいい結果が残せなかった、なんてことも十分ありえるのです。


このように、入試の多様化の象徴のようなAO入試ですが、一方で、自己推薦を含めて廃止する動きもみられるようになりました。例えば早稲田大学では、人間科学部の自己推薦入試を廃止し、教育学部も定員を3分の1にすることで評定平均の基準を引き上げ、政治経済学部も定員を約半分にした上で、TOEFLのスコアの提出を義務化しました。また、青山学院大学の国際政治経済学部のAO・中央大学商学部や立教大学経済学部の自己推薦入試を廃止しました。国公立大にしても、後期試験を廃止し、その分をAO入試に移行する大学が増える一方で、AO入試を廃止する大学もみられるようになりました。傾向としては、学生の学力低下に伴う大学の地位低下を懸念する難関大ほど、AOや自己推薦入試に懐疑的になったと言えます。

ただ、このことは自己推薦を含めたAO入試自体に問題があるというより、受験生の意識や、大学のAO入試に対する受け止め方・利用法に問題があると言えます。ですので、自分自身でよく検討し、メリット・デメリットをふまえた上で、「これなら受験した方が有利だ」「けっこう大変だけど、そうした課題をこなしてでもこの大学に行きたい」と思えるのであれば、受験する価値はあると思います。もし、そこまでではないのであれば、最初から一般入試にしぼって勉強をした方が無難かもしれません。また、たとえAOでの受験を決めたとしても、合格するまでは、一般入試向けの勉強も継続してください。
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