大学入試センター試験について

既にご存知とは思いますが、大学入試センター試験(以下「センター試験」)とは、独立行政法人大学入試センターによって、例年1月13日以降の最初の土曜日・日曜日の2日間にわたって行われる、日本の大学の共通入学試験のことです。

全教科・全科目で設問の解答をマークシートに記入する方式となっており、原則として高校の学習指導要領に沿って出題され、東大志望者から私大一般入試への「練習」としての受験者まで、幅広いレベルの受験生が受けますので、しっかり対策さえしていれば高得点を取れる、どの科目も平均点が60%くらいになるようなレベルの出題になっています。

かつては、「大学入試共通第一次学力試験(通称:共通一次)」と呼ばれる試験が、国公立大(及び産業医科大学)の入学志願者のみを対象に実施されていましたが、センター試験では私大の参加も可能になり、センター試験の成績を利用した入試が行われるようになりました。これにより、試験自体を流動性のあるものに改めたのです。さらに2006年には、機械トラブルも話題になりましたが、英語のリスニング試験が、世界で初めてICプレイヤーを利用する形で実施されました。

1.変更点について
過去の変更はここでは省略いたしますが、2015年度センター試験は、なんといっても学習指導要領の改定に伴い、数学と理科で新課程に対応した出題となることが最大の変更点です。また、数学の出題科目や選択方法は旧課程と同じなのですが、出題範囲が「数学A」は「場合の数と確率」「整数の性質」「図形の性質」の3項目から、「数学B」は「数列」「ベクトル」「確率分布と統計的な推測」の3項目から、それぞれ2項目を選択する形式になります。ですので、過去問を利用する際には、内容や構成が変わる点に注意が必要です。

一方、理科の出題科目は、旧課程の「理科総合A」「理科総合B」「物理I」「化学I」「生物I」「地学I」を廃止し,新たに2科目増加し、「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の基礎4科目及び、「物理」「化学」「生物」「地学」の専門4科目の計8科目になり、受験生は、志望する大学の入試科目に応じて、下記のA〜Dの4パターンの中からいずれかを選択する形式になります。また、前回の変更で理科のグループが1つに統一されましたが、この変更に伴い、理科は基礎4科目がグループ?(以下理科?)に、専門4科目がグループ?(以下理科?)に分かれます。

<受験パターン>
  A (基礎2科目) :「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目から2科目選択(計4単位相当)

  B (専門1科目) :「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から1科目選択(計4単位相当)

  C(基礎2+専門1):「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の基礎4科目から2科目及び、
            「物理」「化学」「生物」「地学」の専門4科目から1科目を選択(計8単位相当)

  D (専門2科目) :「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目から2科目選択(計8単位相当)

「基礎1科目」の選択は認められないため、単位数としては最小で4単位、最大で8単位分、科目数では最大で3科目の選択となります。

これらのどのパターンを選ぶかは、各大学が、どのパターンを受験可能とするかにかかっています。ただ、国公立大文系の多くはパターンAですが、旧課程時の理科1科目と比べますと、1科目分負担は重くなりますし、 国公立大理系の多くはパターンDで、一見同じ2科目ですが、旧課程よりも2単位分負担は重くなる分、出題範囲が広くなるのです。ということは、いずれにしても受験生の理科の負担は重くなります。 そこで、新課程入試では、いかに早い時期から他教科とのバランスをふまえて学習し、負担が重くなった分の理科の対策に力を入れられかが合格のカギとなるでしょう。

尚、2016年も、学習指導要領の改定に伴い、「工業数理基礎」(数学のグループ?−以下数学?:下記参照)を廃止する予定です。


ここで、現在高校生の方々は既に新課程での授業を受けているはずですので問題ありませんが、2014年以前の卒業生の方々のために、念のため新課程の数学・理科について簡単にご説明いたします。

●数学について
  新課程では、今までの7科目(数学基礎・?・A・?・B・?・C)の構成が、6科目(?・A・?・B・?・数学
  活用)
の構成に再編されました。内訳としては、「数学C」が廃止され、ここで扱っていた内容の一部は、「数学?」
  「数学B」などに移行されました。それに伴い、各科目で、特に「数学I」「数学A」「数学?」で扱う内容が大きく
  見直されました。また、旧課程では、必履修科目が「数学基礎」と「数学I」のどちらかでしたが、新課程では
  「数学I」のみが必履修科目となったほか、新たな科目として、具体的事象への活用を重視した「数学活用」が設置
  されました。

●理科について
  新課程では、物理・化学・生物・地学の4科目の標準単位数の合計が6単位なのは従来通りですが、旧課程の物理?など
  の「I科目」、化学?などの「?科目」がそれぞれ3単位だったのに対し、新課程では「生物基礎」などの「基礎科目」
  が2単位、「地学」など、「基礎」を付していない科目、つまり「専門科目」が4単位になっています。また、新たな
  科目として、日常生活・社会との関連を重視した「科学と人間生活(2単位)」、探究を重視した「理科課題研究
  (1単位)」が設置されました。必履修科目については、2科目の場合は、「科学と人間生活」が必修で、基礎4科目
  のうち1科目を選択し、3科目の場合は、基礎4科目から3科目を選択します


2.旧教育課程履修者に対する経過措置について
2015年度のセンター試験では,新課程が一部先行的に実施されたことにより、数学と理科は新課程、それ以外の教科は旧課程に基づく試験が実施されますので、本来なら数学と理科は全員新課程に基づく試験を受けるのが原則です。でも、旧課程履修者に対しては経過措置が取られ、旧課程履修者のうち、希望する人はこの措置により受験することができます。

具体的には、旧教育課程に基づく「数学?」「数学?・A」「数学?・B」「理科総合A」「理科総合B」「物理?」「化学?」「生物?」「地学?」を、旧課程履修者のため出題科目として残し、今まで同様の試験時間・配点により出題するというものです。つまり旧課程受験者は、新・旧課程のそれぞれの科目から選択して解答することができるのです。ただし、旧課程履修者は、新課程に基づく出題科目と経過措置科目のどちらかで受験するかを、出願時に申請する必要があります。ですので、例えば「物理基礎」と「化学?」、「生物」と「地学?」など、新・旧の異なる教育課程の科目を組み合わせて選択解答することはできません。また、旧課程の科目は、理科?に属する形になりますので、理科?の時間に、旧課程の6科目から最大2科目までを選択して受験することになります。尚、新課程履修者は、この措置による受験はできません。


3.出願教科・科目
今回の新課程に伴う変更により、国公立大学では、一部の例外を除き、ほとんどがセンター試験で5(または6)教科7(または8)科目の受験が必須ということになりました。内訳としては、多くの文系では外国語、国語、数学?A・?B、地歴・公民から2科目、理科は基礎4科目から2科目が、理系では外国語、国語、数学?A・?B、地歴・公民から1科目、理科2科目が課されることになります。また、 私大の場合、センター試験を入学者選抜にどう利用するかは、大学ごとに決めています。


4.当日の流れと配点
               <第1日>
●地理歴史:「世界史A」「世界史B」「日本史A」「日本史B」「地理A」「地理B」(注1)
● 公 民: 「現代社会」「倫理」「政治・経済」『倫理、政治・経済」
    2科目選択  9:30〜11:40(120分・200点)(注2)
    1科目選択 10:40〜11:40(60分・100点)

●国 語: 13:00〜14:20(80分・200点)

●外国語: 『英語』『ドイツ語』『フランス語』 『中国語』『韓国語』
   【筆記】  15:10〜16:30(80分・200点)
   【リスニング】(『英語』のみ) 17:10〜18:10(60分・50点)(注3)

               <第2日>
●理科?: 「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」(注4)
       9:30〜10:30(60分・100点)

●数学?: 「数学?」『数学?・数学A』 11:20〜12:20(60分・100点)

●数学?: 「数学?」『数学?・数学B』
      「工業数理基礎」『簿記・会計』『情報関係基礎』  13:40〜14:40(60分・100点)

●理科?: 「物理」「化学」「生物」「地学」
    2科目選択 15:30〜17:40(120分・200点)(注2)
    1科目選択 16:40〜17:40(60分・100点)

注1. 地歴・公民においては、同一名称を含む科目の組合せで2科目を選択することはできません(例:日本史AとB、
   政経と倫理政経)。

注2. 地歴・公民・理科?の試験時間において、2科目を選択する場合は、解答順に第1解答科目と第2解答科目に区分
   し、各60分間で解答を行いますが、第1解答科目及び第2解答科目の間に答案回収等を行うために必要な時間を
   加え、試験時間は130 分です。尚、地歴・公民の受験する科目数と、理科の受験する科目の選択方法は、出願
   時に申告する必要があり、出願後の変更はできません。ただし、受験科目は試験当日に決めることができます。

   また、第一解答科目の方を採用する大学と、良い点数の方を採用した大学とがあり、どちらを採用するかは各
   大学の判断になりますので、あらかじめ確認が必要です。ただ、第一解答科目の方を採用する大学の方が多い
   です。さらに、例えば、医学部希望者が「公民のみ1科目」を選択した場合、東大、大阪大などは受験でき
   ますが、京大は公民は選べず、地歴からしか受験できないため、京大は受験できません。つまり、センター
   試験の結果によっては、第2・第3以下の志望校に出願する可能性があることも視野に入れた出願が必要だと
   いうことになります。

注3. リスニングは,音声問題を用い30分間で解答を行うが,解答開始前に受験者に配付したICプレーヤーの作動確
   認・音量調節を受験者本人が行うために必要な時間を加え、試験時間は60分です。

注4. 理科のグループ?については、1科目のみ受験は認められません。



5.具体的な流れ

出願から受験までの流れは、大学入試センターが配布している「受験案内」にて確認することになります。「受験案内」は全国の各予備校及び、センター試験を利用する大学で配布されているほか、テレメールでも取り寄せることができます。ただ、高校生は志願票送付から受験票の受け取りまで、全て高校で行うことになりますので、個別に受験案内を取り寄せる必要はありません。担任の先生の指示に従っていただければと思います。

●検定料の払込:9月上旬〜10月中旬(2015年度は9/1〜10/9)
受験の区分によって料金は2種類に分けられており、2教科以下の受験では12,000円、3教科以上の受験では18,000円です。尚、成績開示希望の場合は別途手数料800円がかかりますが、開示されるのは4月以降になります。

●出願:10月上旬(2015年度は9/29〜10/9)
志願票に必要事項を記入し、検定料払込の際に窓口で受け取る「検定料受付証明書」を貼り付けた上で、大学入試センターに送付します。ただし高校生は、学校単位で送付することになります。

●登録内容の確認:10月下旬〜11月上旬
大学入試センターより志願票内容を確認する「大学入試センター確認はがき(出願受理通知)」が届きます。ただし卒業見込者は学校単位で届きますので、担任の先生からもらってください。

●受験票の送付:12月上旬〜12月中旬
登録された内容をもとに受験票が届きます。ただし卒業見込者は学校単位で届きますので、担任の先生からもらってください。受験票には各大学に提出する成績請求票、成績開示変更届に加え、写真票がついていますので、受験日までに受験票と写真票に証明写真を貼っておいてください。

●本試験受験:2015年度は1/18(土)・19(日)
指定された受験会場で受験します。高校生は高校から近い会場、その他の受験者は自宅から近い会場が選ばれ、変更することはできません。

●センターリサーチ(大手予備校で実施):センター試験終了翌日の月曜の午前中
システム上、やむを得ないといえばそれまでですが、自分自身のセンター試験の結果を確認することはできません。そこで、解答する際に、問題用紙に自分の解答をメモし、それを次の日の新聞や大手予備校のHPなどで発表される正解や配点と照合し、結果を「推定」するという、いわゆる「自己採点」を行います。その上で、自己採点結果を大手予備校に送ることにより、受験予定の(または、既にセンター利用入試に出願済の)大学の志望者の中における自分の位置を知ることができます。各予備校で実施していますが、高校生は学校単位で申し込みます。代表的なものでは、代々木ゼミナールの「センターリサーチ」、河合塾の「センター・リサーチ(バンザイシステム)」、駿台予備学校・ベネッセコーポレーションの「データネット」などですが、事実上、これら全てが「センターリサーチ」と総称されています。尚、これらの結果は、その週の金曜日には戻ってきます。

●得点調整の有無の発表:本試験終了から5日後(金曜日)

●追試験:本試験1週間後の土曜日・日曜日(2015年度は1/24・25)
本試験当日に病気や事故などの理由で受験できなかった場合や、本試験でトラブルにあった受験生のうち、再試験を希望する受験生を対象にして実施されます。なお、追試験の方が本試験よりも難度が高いことが多いので、本試験が受けられるに越したことはありません。

●平均点などの最終発表:2月上旬(2015年度は2/5の予定)

●成績通知表の送付:4月16日以降
出願時に成績開示を希望し、手数料800円を支払った受験者のみに対して行われます。



6.得点調整について
最近はあまり行わずにすんでいますが、センター試験の本試験において、同一グループの科目間で20点以上の平均点差が生じ、これが問題の難易差によるものと認められる場合には、「得点調整」と呼ばれる統計的処理が行われます。適用対象は、「日本史B・世界史B・地理B」「現代社会・政治・経済・倫理」「数学?・数学Aと旧数学?・旧数学 A」「数学?・Bと旧数学?・旧数学 B」「物理・化学・生物・地学・旧物理?・旧化学?・旧生物?・旧地学I」です。

  • 大学入試センター: http://www.dnc.ac.jp/

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