私立大一般入試について

私立大の一般入試の仕組みについて一言で言えば、「早い大学では1月下旬から始まり、2月下旬〜3月上旬までに実施されるのが一般的で、複数の学部・学科を受験する学内併願は自由」ということになります。ただ、保護者の方の世代と比べますと、入試方法が複雑化していますので特に注意が必要です。そこで、その複雑化した内容について、いろいろな面からご説明したいと思います。

1.日程面より
●複線(複数の日程がある)入試
  これは、別にこういう名前の入試があるのではなく、学部ごとに一般入試を複数回行う大学がほとんどになったと
  いうことです。例えば、1月下旬〜2月上旬に1回目、2月中旬〜下旬に2回目、3月に3回目という大学が増えており、
  それぞれ「A・B・C方式」「前期・中期・後期日程」など、大学ごとに呼び方が異なります。ちなみに、このケース
  では、最初の出願の際に全ての日程の出願をしなくても大丈夫です。例えば、A日程の合格発表日が2/10で、入学
  手続き締切日が2/15、B日程の出願締切日が2/16となっているなど、早い日程で合格すれば、それ以降の日程の入試
  は受験しない、という前提にのっとり、早い日程での結果を見てから出願できるようになっているからです。複線
  にしているのは、ある程度の人数の辞退者が出ることにより、1回の入試だけでは定員が集まらない場合を考慮し、
  その分を補う目的で入試を複数回行う場合と、あくまで大学側の戦略として、あらゆるタイプの学生を獲得するため、
  意識的に時期を分けて行う場合とがあります。また、難関大ほど入試の回数は少ないです。

●試験日自由選択入試
  これは、例えば2/1〜3が試験日で、この3日間であれば何回でも受験可能というものです。ということは、3日とも
  受験しても大丈夫です。この入試のメリットは、チャンスがたくさんあることと、併願校と入試日が重なった場合、
  その日を避けて受験できることです。ちなみに複線入試との違いは、この例の場合、2/1〜3で受験した中で、一番
  成績が良いものを採用してくれることです。その証拠に、3日間とも合格発表日が同じです(ただし、大学ごとに
  多少事情が異なることがあります)。つまり、3日とも受験する場合、3日のどこかで良い結果が出せればいいわけ
  ですから、たとえ初日で失敗しても、気持ちを切り替え、翌日以降に一からチャレンジできるのです。この点が、
  1回1回合否が出て、不合格なら次の日程で受験、・・・と繰り返される複線入試との違いです。ただ、たとえ合格
  するまで何回でも受験するだけの覚悟があっても、1回目で合格すれば2回目以降は受ける必要がない複線入試と違っ
  て、この入試方法では1回ごとに判定してもらえないため、3日とも出願したら、たとえ初日に手ごたえを感じても、
  確証がない以上、余程自信がない限り、3日とも受験することになります。

●全国(地方)入試
  これは、全国各地に試験会場を設け、地方の受験生が、わざわざ高い交通費と時間(と、場合によっては宿泊費)
  をかけて志望校に受験に行かなくても、地元またはその周辺の都市で受験ができるという入試です。つまり、地方
  の受験生やその保護者の方にとっては、時間とお金と労力を最小限に抑えられ、地元の国公立大志向の受験生を1人
  でも多く取り込みたい大学側にとっては、地方の優秀な学生の獲得のきっかけになりうることが最大のメリットです。
  ただ、その点以外は通常の入試と同じです。会場となる都市については、大学によって異なりますが、だいたい札幌、
  仙台、名古屋、大阪、広島、福岡あたりが多く、その他水戸、大宮、新潟などもあります。また、地方で行うことが
  名目のこの入試ですが、関東「地方」在住の受験生用にということで、通常通り校内でも実施する都心の大学もあり
  ます。いずれにしても、受験のチャンスが増えるわけですから、メリットはあると言えるでしょう。ただ、この入試
  の募集人員は、どの大学でも少ないとお考えください。

●その他
  2005年に早稲田(商)で導入された9月入試は、当時大変注目されました。これは、今までの4月入学だけでなく、
  欧米大学のように10月入学もできるようにするために9月に入試を行ったのですが、現在は行われていません。
  このように、年2回入学・卒業が可能な制度をセメスター制といい、欧米では一般的です。日本の大学で初めて導入
  導入されたのは、1994年の東洋(工−現:理工)ですが、この時もその後の広がりはあまり見られませんでした。
  また最近では、東大が秋入学への全面移行を検討していましたが、結局当面見送りとなり、現行の2学期制より海外
  留学しやすい4学期制を、平成27年度末までに導入するということになりました。やはり日本では、いまだに「桜の
  咲くころに入学」というイメージが根強いのかもしれません。また、どうしても9月入学だと、高校を卒業してから
  入学するまで、あるいは、卒業してから就職するまでの期間に空白ができてしまいます。その期間をむしろ積極的に
  生かそうとする人や、浪人生活を半年で終わらせたいといった人でもない限り、9月入試や秋入学で直接的な恩恵を
  受けるのは、帰国子女くらいなのが現状です。とはいえ、今後もまたこうした動きが出てくるかもしれませんので、
  引き続き注目していきたいと思います。


ちなみに、複線入試を実施する大学の中には、1回の受験料で何回でも受験できたり、2回目以降は受験料を割引したりするなどの特典を設けている大学があります。受験料は、1回受けるたびに30,000〜35,000円かかり、それだけでもばかにはならないだけに、こうした特典があるのとないのとでは全然違います。募集要項などでよく確認しておいてください。


2.教科面より
●科目選択型
  これは、文系なら英・国・地歴公民、理系なら英・数・理のような固定型ではないということです。例えば一部の情報
  系の学部のように、英または数を必修とし、残りの科目から1〜2科目選択させる場合や、3科目受験させ、成績上位
  2科目で判定する場合、帝京大のように、5教科から2教科選択させる場合などがあります。この形式では、苦手科目を
  避けることができますので、一見受けやすく感じられます。実際、他の科目よりも飛び抜けて得意な科目があれば、
  有利に働きます。ただ、注意すべき点は、自分だけでなく、全員が苦手科目を避けられるということです。当たり
  前のことなのですが、意外と見過ごされがちです。英語だけ配点の高い大学の入試を、英語が得意な方が受験すれば
  有利ですが、この場合なら、英語が苦手なら数学や国語で受験すればすみますので、そう簡単にはいきません。この
  方式を採用する大学を受験する場合は、ぜひしっかり認識してください。

●少教科型
  これは、たいていは文系・理系とも3教科必要なのに対し、2教科、少ないところでは1教科のみしか課されないという
  ことです。代表例は、一部の女子大の文系学部で、英・国(現代文)のみです。また、上記の英語+国・地公から1科
  目、5教科から2教科などもその例です。ただ、科目数が少ない分、人物重視の名目で面接を課す大学もあります。
  また、科目数だけでなく、課す科目の範囲が狭い場合もあります。例えば、上記の一部女子大のように、国なら現代
  文のみ、数学なら?Aのみといった場合です。ちなみに、薬学部や獣医学部などは、もともと数学は?Cまでは課さ
  ず、?A・?Bのみですので、今回の趣旨とは異なります。あくまで、他大では?Cまで課すのに、ある大学では?A・
  ?Bのみ、または?Aのみしか課さないというのが、ここで取り上げたタイプです。

  この場合も、上記同様、皆さんの負担が軽くなりますので、一見受けやすく感じられます。ただ、このタイプの最大
  のデメリットは、1教科あたりにかかるウェートが大きく、1つの失敗でも致命的になりうることです。3教科の場合
  なら、たとえ失敗した教科があっても、残り2教科での挽回が可能です。実際、本番の入試で、「全ての科目で手ご
  たえ大」というのはまれです。3教科も受ければ、1つくらい不本意な教科はあると思います。それは誰でも同じ
  です。ただ、受験教科が少ないと、たとえ不本意な教科があっても、教科が少ない分、挽回するチャンスが限られ
  ます。しかも、3教科以上から2教科を選択する場合、「2教科で120分」というように、2教科を同時にやる場合が
  あります。つまり、試験と試験との休み時間がなく、ぶっ通しでやるわけです。そうすると、60分ずつにしなくて
  も、例えば日本史を3〜40分でやって、残りの時間で英語や国語をじっくりやる、といった時間配分ができるメリッ
  トがある反面、教科ごとに時間を区切っていない分、「休憩時間」という、気持ちを切り替える時間がとれません。
  もし、片方の科目で「このままではまずい」と思ってしまったら、同じ時間内に解くもう1つの教科にも悪影響が
  及び、挽回どころではなくなるかもしれないのです。どちらも受けやすいのですが、必ずしも自分にとって有利
  に働くばかりとは限らない
ことを、ぜひ肝に銘じておいてください。


3.配点面より
配点に関しては、よくあるのは次のケースです。

 ●全て配点が同じ           例:英100、国 or 数100、地公 or 理100

 ●英語だけ配点が高い         例:英150、国 or 数100、地公 or 理100

 ●地歴・公民 or 理科だけ配点が低い   例:英150、国 or 数150、地公 or 理100

 ●得意科目のみ傾斜配点にする
    例:英100、国100、地公100 → 英100、国100、地公200
      (地歴・公民を得意科目としてエントリーし、配点を倍にした場合)

一概に言って、有名・難関大と言われるところほど、英語の配点が高い傾向があります。また、有名・難関大ではなくても、英語系の学部・学科や、ミッション系の大学を受験する場合も同様に、英語の配点が高いと考えてください。例外として、早稲田には全て配点が同じ学部があります。ただし、全て50点ずつと配点がどれも低いのです。ということは、1点の重みが他大の比ではなく、かなりの「団子レース」になるため、1問の失敗が致命的になりかねないのです。ですので、たとえ自信なり手ごたえがあっても、1点差で涙を飲む人も少なくありません。このことが、早稲田への合格を難しくしている要素の1つと言えます。


受験の機会が増えたこと自体は喜ばしいことだと思いますが、全てにおいてメリットになるとは限りません。いろいろ検討し、自分にとって、どの大学のどういう方式の入試を受けると有利になるのか考えてみてください。もしわからないことがあれば、学校の先生や予備校の職員・講師に聞いてみるのもいいですが、大学の入試窓口(入試課、広報課、入試広報課など、呼び方は大学ごとに違います)に直接問い合わせるのが一番早いと思います。


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