オープンキャンパスに行こう!

多くの大学では、夏休みを中心に、早ければ春休みからオープンキャンパスが行われます。せっかくの機会ですので、ぜひ参加し、受験(予定)校を自分自身の目で確かめていただきたいと思います。そして同時に、せっかく貴重な勉強時間を割いて行くわけですから、いろいろなことを吸収してほしいと思います。そこで、そんな願いをこめて、オープンキャンパスのメリットや、おすすめの活用法についてのご提案をしたいと思います。

1.オープンキャンパスとは?

おそらく、「オープンキャンパス」という言葉を、一度は耳にしたことがあると思います。もしかしたら、既に参加した方もいるかもしれません。そういう方には「いまさら」と思われるかもしれませんが、オープンキャンパスというのは、特定の日に、受験生や入学希望者、その他その大学に興味のある人などに大学を開放・公開し、実際にキャンパス内を見学できるようにすることで、大学への関心を深めてもらうことを目的とする、いわば入学促進のためのイベントのことです。

「百聞は一見に如ず」の言葉の通り、実際に大学の雰囲気を体感できますので、パンフレットやHPだけではわからない、大学の実際の姿を自らの目で確かめられ、しかも、具体的な情報が一度に収集できる大きなチャンスです。時期としては、高校が夏休みになる7月〜8月にかけて実施する大学が圧倒的に多く、1回につき、半日〜1日かけて行われることがほとんどです。さらに、私立大学の中には、夏休みのほか、土・日・祝日を中心に、年間を通じて何回も行うところも少なくなく、そのうちの一回を、学園祭と同時期に行う大学もあります。また、最近では校内の見学にとどまらず、体験授業や講演会なども開かれ、ますますイベント化してきています。一方で、より受験に特化した内容をあえて行う大学もあります。

オープンキャンパスは、90年代以前には、希望者にその都度個別に公開することはあっても、今のような形では行われていませんでした。もちろん、私の受験生の頃にはなく、大学と受験生の間には言わば一定の「距離」があり、「入りたければ実力で合格を勝ち取りなさい」と言わんばかりに突き放されたような、一種の「権威」を感じたものでした。それが、いわゆる「少子化」を背景に、受験生の確保を目的として、90年代後半くらいから一部の大学で行われるようになり、2000年代になると、「難関校」と呼ばれる大学でも開催されるようになりました。 もっとも、難関校の場合は、受験生の確保もありますが、「思っていたのと違う」というミスマッチを減らすための、「事前説明の機会」をつくる目的の方が大きいように思います。そのせいか、他の大学ほど多くは実施していないようです。いずれにしても、今の受験生にはこのような機会があり、正直うらやましいです。

2.当日の主な内容

オープンキャンパスでは、それぞれの大学がそれぞれの特色を生かし、いろいろな内容が盛りだくさんになっています。主なものとしては以下の通りです。

?学長や著名教授による講演

多くの大学では、だいたいこれから始まります。主にその大学の教育方針などの紹介、どんな学生に来て欲しいか、何のために大学に行くのか、大学で勉強する意義、などのテーマについてのお話を聞きます。

?キャンパスツアー

大学職員や教授、先輩などの案内のもと、学内を見学します。大学の敷地は、高校とは比べ物にならないくらい広いですし、初めて訪れる人には、どこに何があるのか全然わからないはずですので、全てを自分だけで見て回るのは大変です。その点、案内役がついてくれれば、各棟や、学生生活に欠かせない施設をまんべんなく、かつ効率よく見学することができます。また、大学によっては、研究室の公開や内容の説明などもあります。

?入試説明会

入試問題を担当する教授から、過去問の傾向や解説、対策法などをわかりやすく教えてもらえます。担当する側が直接教えてくださるわけですから、これほど確かで有利な情報はありません。また、説明会後には、その大学の赤本を配布してくれるところもあります。さらに、大学によっては、AO入試や公募制推薦入試の相談やエントリーの場になったり、問題作成者の代わりに、わざわざ予備校講師を招いての過去問解説や学習法アドバイスの機会が設けられたり、ということもあります。いずれにしても、入試に直結する内容だけにしっかり聞いておきましょう。

?体験(模擬)授業、体験実習

実際に行われている講義が体験できます。実際の講義といっても、担当する教授は、高校生でも十分理解できるよう、内容には配慮しますので、安心して受講できます。大学や学部によって、講義形式もあれば、実験に参加したり、何かを制作したりするなどの実習形式もあります

?先輩との交流会

大学によっては、実際に学生生活を送っている先輩から、体験談やこれから受験する皆さんへのアドバイスが聞ける機会があります。たとえこうした正式な会がなくても、お手伝いで来てくれている先輩に、合間にいろいろお話を聞いたりすることはできると思います。研究テーマや講義内容、単位の取り方などはもちろん、大学近辺のおすすめのお店、サークル、アルバイト、就職活動など、興味があることからわからないことまで、またとないチャンスですから、遠慮せずに何でも聞いてみましょう。その大学を知る一番の近道ですし、何より、わざわざお手伝いに来ているということは、その先輩は、大学の長所・短所の両方をふまえた上で、その大学を気に入っており、キャンパスライフをエンジョイしている証拠です。実は、オープンキャンパスの一番の収穫はこれかもしれません。

?学食・ラウンジ体験

オープンキャンパス当日には、昼食時に「学食体験」と称して、学食のメニューを体験することができるところがほとんどです。かつては安さが最大の売りでしたが、最近では、レストラン顔負けの、安い・うまい・早い・量が多い・きれい・おしゃれ・くつろげると、何から何まで揃ったところが多く、学生にはなくてはならない場所です。たとえ皆さんの高校に食堂があるとしても、利用するのはおそらく昼食時だけだと思いますが、大学の学食やラウンジは、食事や休憩の場だけではなく、学生同士が顔を合わせ、腰を据えて会話できる独特な空間です。高校までとは違い、クラスの教室がないため、同じ学科やゼミ、サークルの仲間などと顔を合わせることのできる貴重な場になっているからだと思います。そんな学食で食事を体験することで、ささやかながら大学生気分を味わってみましょう。

?その他相談会

上記のほかに、個別相談や質問の受付を行う機会が設けられています。自分の学びたい内容がその大学で学べるかや、取得可能な資格、入試制度、特待生や奨学金の制度、大学生活、就職支援など、受験のことから入学後、さらには就職のことまで、その大学について確認しておきたいことがあれば、せっかくの機会ですので、まとめて聞いておきましょう。

尚、「オープンキャンパス」と銘打っていなくても、見学や相談などを随時受け付けている大学はけっこうあります。もし当日都合が悪かったり、他大のそれと重なっていたりした場合は、こうした機会を利用してもいいと思いますし、むしろその方が、その大学の日常の姿を見ることができます。

3.オープンキャンパスに参加する具体的なメリット・デメリット

まずはメリットから。

○志望校がより身近に感じられ、受験勉強にも明確な目的が生まれる。

○自宅から通える範囲の大学であれば、自宅からの交通手段を実際に利用するため、通学時のイメージが持てる上、
 受験当日の下見にも役立つ。

○志望校が決まっていない人でも、興味のある大学に実際に行ってみることで、悩みや迷いを解消できるきっかけになる。

○AO入試や公募制推薦入試の相談・エントリーも行われることがある。

○参加の記念として、学校オリジナルのグッズや、募集要項や入学願書、過去問など、受験に役立つ限定アイテムが
 配られることもある。


一方で、「デメリット」というと言いすぎですが、難点としては、

●あくまでイベントであり、しかも夏休みにある場合は、在学生がほとんどいないため、その大学の日常の様子が
 見られるわけではない。
●あらゆる広告媒体を活用して大々的に宣伝しているので、参加者を過剰に(実際の中身以上に)期待させて
 しまうことがある。

●入学促進が目的のため、その大学のいいところしか見せない傾向があり、いいイメージしか持たないまま受験し、
 入学後に別の一面を知って「思っていたのと違う」ということになるリスクがある。

●入学後、オープンキャンパスでお会いできた魅力的な教授や、頼りがいのある先輩との接点が、入学後もあるとは
 限らない(どの教授も先輩も自分に合った人ばかりとは限らないのに、過剰に期待させられる)。

という一面もあります。でも、これらを全てふまえて参加すれば、実りの ある機会になると思いますので、ぜひ積極的に参加してみてください。

4.おすすめの活用法

◎事前にパンフレットなどの資料は一通り目を通しておく

いくら当日一通り確認するとはいえ、下調べも何もしないのでは、当日何を確認するのかがあいまいになりますし、「質問した内容は、実は全部パンフレットにわかりやすく書いてあった」というのでは、何のために参加したのかわかりません。ただ「よかった。楽しかった。」程度で終わります。それに、もしそんな質問ばかりすると、たとえ1つ1つていねいに答えてもらえても、「この人はうちのパンフレットを何も見ていないんだな」という印象を持たれてしまいます。もちろんそれが理由で落ちるわけではありませんが、一応上位志望にしている大学なのですから、授業前に予習をするのと同じように、せめてパンフレットを一通り目を通し、どんな大学なのかくらいはあらかじめ調べてから参加しましょう。

◎当日の目的、テーマを明確にする

いくら興味のある大学とはいえ、受験勉強中の貴重な1日を使ってわざわざ参加するわけですから、有意義なものにしてほしいと思います。そのためには、目的やテーマをはっきりさせた上で参加することです。「とにかく先輩や教授の生の声を少しでも多く聞こう」「本当にここを第一志望にしてもいいかどうかの最終判断をしよう」「特待生や奨学金の制度について、親に報告できるようしっかり聞いて、親の負担を少しでも軽くできるか確認しよう」など、何でも結構です。このような、何か柱となるべき目的・テーマがあるとないのとでは全然違いますのでおすすめです。

◎質問や相談は内容を吟味し、3〜5項目くらいにまとめる

進学雑誌などの特集で、オープンキャンパスについて取り上げているものが毎年ありますが、そこには決まって「オープンキャンパスではココをチェック!」といったタイトルで、チェックリストが掲載されていることがあります。家からの距離、学費、学部の内容から学食まで、多いものでは20以上の項目があるものまで存在します。でも、機械の点検ではないのですから、そんなに細かく1から10まで質問されたら、大学職員の方もたまりません。また、自分だけが参加者ではありません。そこまでやったら、他の質問や相談したい人たちにまで迷惑がかかります。事前に調べられることは事前に調べ、プログラムの中で確認する機会があったり、説明があったりするものはその時に確認し、その上で出てきた疑問や相談事、あるいは、説明を聞いてもわからないものなどを3項目、多くてもせめて5項目くらいに絞って質問や相談をしましょう。

◎中位志望校ほど実際に行ってみて、受験するかどうかを決める

私が特におすすめしたいのはこれです。ほとんどの方は第一志望校のオープンキャンパスには行くと思いますが、それ以外の大学、ましてや「滑り止め」の大学にまで行きたいとは思わないと思います。でも、本来事前に確認しておいた方がいいのは、むしろ上位志望校以外の大学です。おそらく上位志望校なら、オープンキャンパスへの参加如何にかかわらず、受験はすると思います。でも、受験では何が起こるかわかりませんので、どんなにがんばったからといって、絶対上位志望校に合格できるとは限りませんし、たとえ模試でA判定が出たとしても、それが合格を保証するわけでもありません。ですので、上位志望以外の大学も自分の目で確かめ、たとえそうした大学に決まったとしても、それなりのキャンパスライフが送れるかどうかを確認しておく必要があります。その結果、「ここでの4年間なら、たとえ上位志望の大学がだめで悔しくても、最終的には納得できるかも」と思える大学を併願受験すれば、どんな結果になっても、胸を張って入学できると思います。滑り止め校が無理でも、せめて中位志望(第3〜5志望くらい)の大学は、できる限り参加することをおすすめします。

◎オープンキャンパスに参加する前提で学習計画を立てる

オープンキャンパスは、受験校を決める上で重要な役割を果たします。ですので、機会があればできる限り参加してほしいですが、同時に、事前に日程がわかっているわけですから、当日は勉強ができないぐらいの前提で学習計画を立てる必要があります(もちろんやるに越したことはありません)。そのことを忘れて立ててしまい、オープンキャンパスに何日か参加したばかりに、計画が大幅に狂い、やり残しができてしまったというのでは、何のために勉強しているのかわかりません。オープンキャンパスに限らず、模試や登校日(高校生)といった、事前にわかっている行事などについては、あらかじめ計画表に入れておき、それらに参加しても十分にこなせるような学習計画を立てるようにしましょう。そうすれば、当日は心置きなくそれに集中できます。

オープンキャンパス日程について

オープンキャンパスの内容については、おわかりいただけたでしょうか? わかったところで、早速行きたい大学のオープンキャンパスの日程を確認してみてください。高校や予備校には、大学ごとに告知ポスターが貼られていると思いますし、受験雑誌やインターネットで詳細を確認することができます。ここでは、どう調べていいかわからない方のために、いくつか検索できるHPをご紹介いたします。よかったら参考にしていただき、1校でも実際に行ってみてください。


        ●リクナビ: http://shingakunet.com/openCampus/

        ●大学受験パスナビ: http://passnavi.evidus.com/sp/opencampus

        ●ナレッジステーション: http://www.gakkou.net/occalendar/daigaku/

        ●マイナビ進学: http://shingaku.mynavi.jp/search/event/

        ●逆引き大学辞典: http://www.gyakubiki.net/op/


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