予備校に通いたくても通えない方へ

いくら第一志望校合格を目指そうにも、通学圏内に予備校自体がなければ、通いたくても通えません。でも私は、教育は「機会均等」でなくてはならないと思っています。そこで、そうした方が予備校に通う代わりに取れる方法として考えられるものについて、思いつくままにご紹介したいと思います。どれも全く初めて聞く内容ではないかもしれませんが、ここではあくまで可能性を整理し、それぞれの場合で考えられるメリット・デメリットをご紹介すると共に、有効活用するためのご提案をさせていただきます。また、1つだけを採用することにこだわらず、使えるものはいくつでも組み合わせていいと思います。尚、当HPの趣旨を考慮し、「全くの独学で行う」場合以外について取り上げることにいたします。

1.地元の個人塾・個別塾などに通う

たとえ大手の予備校がない地域でも、個人塾や個別塾はあると思います。大手の予備校ほどではないとしても、実績があるからこそ今まで続いていると思いますし、最低限の受験ノウハウは持っているはずです。そこでしっかり継続して勉強すれば、ある程度の結果は出るはずです。尚、もし不十分だと感じるようであれば、上記の通り、他の手段と組み合わせることをおすすめします。

2.大手予備校と提携している地元の個人塾で、映像授業コースを取る

「映像授業」そのもののメリット・デメリットについては、「こんな時どう選ぶ?」のページで映像授業について取り上げましたので、併せてご覧ください。

普通に予備校を開校しても採算が取れない地域でも、映像授業中心なら小規模でも開校可能ですので、わずかなニーズを拾うことができます。また、地元の個人塾・個別指導塾と※フランチャイズ契約を交わして提携すれば、新規開校しなくても、大都市でしか受けられないはずの授業の映像を地元で見ることもできます。もしこれに該当する地元の塾があれば、利用しない手はないと思います。


主なメリットですが、開館時間内であればいつ通っても大丈夫でしょうから、高校生の場合、部活との両立もできます。また、質問はその提携先の個人塾の講師にすれば大丈夫です。映像授業の予備校の多くは、質問の受付がFAXやメールになる上、解答が戻ってくるのに数日かかることもあります。たとえ校舎で質問できるとしても、大学生のアルバイトが対応することになるだけに、これは大きなメリットです。

ただ、デメリットとしては、「映像授業」そのもののデメリットとほぼイコールです。通う日が指定されないため「強制力」が弱く、先送りばかりしていると、見るべき映像教材がたまっていき、結局ほとんど受講しないまま終わるリスクがあります。そうならないためには、まず自らの志望校合格への強い意志と高い意識が必要です。さらに、映像を見るだけで終わりにするのではなく、塾長などに事あるごとに相談して関係を保ち、続かなかったりたまったりしないよう、常に声かけしてもらったりすることです。そうすれば張り合いを持って取り組めるはずですし、この流れさえできれば、大きなメリットになるでしょう。

※フランチャイズ
今回の場合、大手の予備校が加盟校(つまり地元の個人塾)に対し、大手の予備校名の使用を認めるとともに、ノウハウ(その予備校の講師の映像授業やテキスト、生徒募集方法など)を提供し、一定地域内における独占的販売権を与え(要は近所に同じ名前の予備校をつくらない)、その見返りに特約料を徴収する(つまり学費の一部をその大手予備校に払う)というスタイルのビジネスです。 都市部に比べて生徒数が少ない地域に、新しく校舎を建てても費用対効果が悪いため、長年地元で活動してきた個人塾と契約することで、全国展開したい大手予備校も、もっと生徒を獲得したい個人塾も、大手の予備校の授業を受けたい地元の受験生にとっても、みんなにメリットがあります。

3.映像授業の自宅学習コース(eラーニング)を申し込む

やることは2と同じですが、違うのは、映像授業を地元の個人塾に通って見るのではなく、自宅で見ることです。通う必要がないため、時間の節約になりますし、もちろん部活との両立も可能です。もっとも、映像授業の話の際に取り上げました通り、質問への対応に時間がかかることがあります。とはいえ、できないよりはできた方がいいですし、運営する各予備校とも、なるべく早く解答できる工夫をしてはいるようです。 一方、最大のデメリットは「自分の部屋」という、受験勉強をするにはあまりにも誘惑の多い場所で見る形になることです。眠くなったり休憩したくなったら、見たいテレビの時間が来たら、友人から電話やメールが来たら、そのたびに一時停止して・・・なんてことの繰り返しでは、全然進みませんし、集中力もつきません。しかも、当然ながら強制力がないため、特定の日時に絶対見なくてはいけないわけではなく、継続するのにはかなりの精神力が必要です。近くに個人塾すらなかったり、(メンタル面を含む)持病や豪雪地帯などの理由で通学が困難な方や、地元の個人塾は2に該当しない、といった場合ならともかく、そうでない方はよく考えてからの方がいいでしょう。

4.家庭教師を雇う

通うのが困難でかつ、自宅学習用の教材をこなすのはちょっと・・・、 という方にはぴったりです。主なメリットとしては、
 ◎教師の方から自宅に来てくれるので、通う必要がない。
 ◎教師の時間の都合さえ合えば、部活との両立が可能。
 ◎自分の希望に合わせてもらえる。

ということが挙げられます。やはり、雨や雪の日でも通う必要がなく、ただ家庭教師が自宅に教えに来てくれるのを待てばいいというのは何よりのメリットです。また、通学時間が浮く分、他の勉強ができますし、部活の時間を含め、ある程度はこちらの都合に合わせてもらっても大丈夫なはずなので、時間の節約・有効利用につながります。さらに、いわば自分専用の講師ですので、リクエストもふんだんに織り交ぜられますし、質問もし放題です。一方でデメリットは、


●料金が高い。
マンツーマンですので、当然といえば当然です。言うなれば、目的地は同じでも、電車とタクシーでは料金が違うのと同じです。

●地域によっては、自宅が「通勤圏内」の家庭教師ばかりとは限らない。
以前は、家庭教師が個人的に、スーパーやフリーペーパーなどに募集広告を出したりしていました。でも最近では、家庭教師の派遣会社に問い合わせ、そこに登録している教師の中から、「通勤圏内」でかつ、希望に添えられる教師がいるかを検索して紹介する形式が主流です。ですので、来てもらえないことへの心配はないと思いますが、どの地域でも絶対大丈夫とは言えません。

●教師の多くが大学生のアルバイト。
映像授業のところでも取り上げましたが、塾や予備校でもよくある話ではあるものの、大学受験経験者として、教えられるだけの知識はあるものの、プロではないので、必ずしも皆さんに合ったわかりやすい教え方をしてくれるとは限りません。もちろんプロの教師もいますが、当然その分料金は高くなります。ただその一方で、皆さんと年齢的に近いことで親近感が持てたり、最近まで受験生として苦労していたので、実感を込めて教えられるなど、大学生のアルバイト教師だからといって、デメリットばかりとは限りません。

●もし「この教師とは合わない」と思っても、気分的に断りにくい。
実は私も、親に勧められるがままに、一時期家庭教師をお願いしたことがありますが、その方とは合いませんでした。予備校や映像授業なら、まだ変更できる可能性がありますが、自分のためだけに来る家庭教師では、どう対処するにしても、「自分から一方的にクビにする」ような後味の悪さが残ります。日本人って何かそういうのが苦手ですよね。かといって、続けてもモチベーションが上がらないでしょうから、精神的にはデメリットと言えます。

●「強制力」が中途半端にしか働かない可能性がある。
私が一番気になるのはこれです。通信講座などと違って、一応家庭教師が来る日時は事前に決めますので、それまでに予習などの準備をしておかなければならない、という意味では「強制力」があります。でも、あくまで勉強するのは自宅、それも自分の部屋です。教師は生徒の家におじゃまし、そこから直接指導料を頂戴している手前、たとえ生徒がわがままだったり、少しでもわからなくなるとすぐ「ちょっと休憩!」などと言って、ベッドに横になられたりしても、あまり強くは出られません。しかも保護者の方に相談しても、基本的にはわが子の肩を持つでしょう。そんな態度では、成績も上がるわけがないにもかかわらず、「高いお金を払っているのに、全然成績が上がらない」などと言われるのが関の山です。そんな環境では理想的な「強制力」が働くとは思えません。やるからには、自宅が予備校のつもりで必死にやるだけの覚悟がないと、依頼してまでやる意味がありません。

といったことが挙げられます。結論としては、独学や通信講座などよりは「強制力」が働くものの、本人の意識がある程度高くないと、メリットを最大限に生かせないまま、時間とお金だけが消えることにもなりかねません。その心配さえなければ、おすすめの手段と言えるでしょう。

5.通信添削講座を申し込む

昔からの定番ですが、メリットとしては、
 ◎通う必要がないため、居住地域に関係なく学べる。
 ◎予備校に通うよりも安い。
 ◎市販の参考書より、解答・解説が詳しくかつわかりやすい。
 ◎いつでもどこでも好きな時にこなせる。
 ◎部活との両立が可能。
 ◎添削課題があるので、国公立二次試験など記述問題対策には特に役立つ。


ということが挙げられます。一方、長年言われ続けているデメリットは、
 ●添削課題を提出してから、添削されて戻ってくるまでが長い(問題はもちろん、こなしたことすら忘れてしまう)。
 ●次号が届くまでは、添削課題の詳しい解説が確認できない。
 ●「課題はきちんと解いて提出しよう」という気持ちが強くなり、解くのに膨大な時間をかけてしまうことがある。
 ●「強制力」が働きにくいので、ためてしまう可能性がある(よほどの持続力がないと続かない)。

ということです。昔からあるやり方だけに、昔からいろいろ言われて久しい通信添削講座ですが、もしこれを生かす場合、やはり「記述問題対策」として使うのが最適だと思います。具体的には、英語の下線部訳・要約・英作文、数学、現代文・理社の論述形式の問題、小論文などです。これらは、たとえ予備校で記述対策がある講座を受講したとしても、解説を聞くだけでなく、自分の解答を添削してもらわないと意味がないため、結局通信添削でもほぼ同じ効果を得られるからです。あとはデメリットをどう解決するかですが、添削課題については、予備校職員の私が言うのも変ですが、以下のやり方での活用をおすすめします。

◎時間を決めて模試のつもりで解き、時間になったら一旦やめる。その上で、もう少し時間をかければ解けそうな場合
 や、参照する参考書等の目星がついている場合のみ継続し、そうでない場合は、きちんと解くことにこだわりすぎず、
 この段階で提出する。

◎高校生の場合は、上記のやり方で解いて提出する前にコピーをとり、わからなかった問題や自信がない問題は、後日
 高校の先生にコピーごと見せて質問する。また、返却されたら改めて復習し直し、定着を図る。

◎返却までが長くて気になる場合は、締切日に関係なく解き、終わったら次号で解答・解説を確認した上で提出する。

あくまで合格が第一ですので、体裁や通信講座側の意向にこだわらず、1人1人にとって最も活用できる方法でこなすことがポイントです。

6.高校の先生を徹底的に頼る

高校生の方にとっては、普段お世話になっている先生方を頼るのですから、原則「追加料金」はかかりません。また、基本的に先生というのは面倒見がいいですし、特に進学校の先生は、受験指導には慣れているはずですので、うまく「活用」できれば願ったり叶ったりです。何より、こうしたことを繰り返すと、一般入試もさることながら、推薦・AO入試の機会にも恵まれる可能性が出てきます。高校としては、わからないことは何でも先生に聞いて解決しようと、日々努力している生徒を推薦したいと思うからです。

ただその一方で、先生のご好意に甘えるため、先生のご都合に左右される難点があります。また、教わる身とはいえ、教え方など、先生との相性がよくなければ頼りにくいでしょう。そう考えると、予備校の講師や職員並に、わかりやすく、かついろいろ指導できる先生ばかりとは限りませんので、あまり大きくは期待できないかもしれません。でも、予備校に通いたくても通えないなら、わからないところを先生に聞いたり、添削したもらったりすることはとても勉強になりますので、ぜひ頼ってほしいと思います。

また、浪人生も不可能ではありません。先生なら、卒業生がわざわざ頼って来てくれたとあれば、何とか協力したいと思うものです。ただ、あくまで在校生が優先ですので、頻繁にというわけにはいかないでしょう。ですので、質問内容をしっかり整理した上で、在校生の迷惑にならない範囲内で相談してください。

7.予備校の近くに(自分だけでも)引っ越す

実際にそこまでする方もいるので取り上げましたが、正直あまりおすすめできません。食事の支度から洗濯、掃除に至るまで家事一般をこなしながら勉強もしなくてはいけない上、ちょっとはめをはずしてもブレーキになる存在がいないため、「強制力」どころではありません。何より、アパートを借りて生活するだけでもかなりの費用がかかります。「どうしても」という場合は、せめて上のきょうだいの下宿先や、祖父母宅や親戚宅などが予備校の近くにあれば、そちらにお世話になってほしいと思います。ただ、私の職場でも毎年1人はそういう生徒がいますが、総じて結果はあまりよくありません。おそらく、保護者の方から「お預かり」している立場であるため、たとえ本人の言動に思うところがあっても、やはり面と向かって厳しく接するのには限度があるからでしょう。

また、生徒の立場で考えてみても、自宅ではないので落ちつかず、かといって自習室で勉強するにしても、あまり遅くまでいると、その分帰宅時間が遅くなり、いろいろと迷惑がかかるからと、早い時間で帰りがちです。確かに、実の親だからこそ、気兼ねなく遅い時間に帰宅できるのだとは思います。尚、もし1人暮らしをするのであれば、そのことを周りの生徒には絶対に言わないでください。言ったら最後、おそらくそのアパートは、友人にとっての絶好の「溜まり場」となり、勉強時間もプライベートも失うことになります。

8.予備校の寮に入り、寮から予備校に通う(高卒生の場合)

高卒生の場合は、この方法があります。何をかくそう私は経験者です。かつては、2〜4人部屋もありましたが、だんだん生徒からも受け入れられなくなり、今では個室がほとんどです。実際、私の時も個室でした。洗濯や自分の部屋の掃除こそ自分でやりますが、食事や風呂などの世話は寮の職員の方がやってくださり、しかも、門限や寮生同士の部屋への訪問制限などの規則が厳しいため、やっていることは似ていますが、7とは似て非なるものです。確かに、寮生同士でつるんだり、だらけてしまったりと、過ごし方やけじめのあるなしによっては、大金の無駄遣いになりかねませんが、かけがえのないメリットもあります。それは、規則が厳しい分、誘惑を最小限に抑えられ、また、寝坊したり、事前連絡なく帰宅時間が遅れたりすると、食事時間に間に合わずに食 しい生活ができることです。それに予備校職員も、寮生には、通学生とは違った意味で目をかけますから、適時相談にも乗ってもらえるでしょう。

さらに言えば、寮生間の情報量は通学生以上のものがありますし、お互いに高め合い、けじめのあるつきあいさえできれば、苦労を共にしてきただけに、生涯の友人にもなりえます。実際、私の寮生仲間のうちの1人とは今でもつきあいを続けており、お互いの結婚式に呼び合い、受付・スピーチなどをお願いし合ったほどです。ただ、高校生は対象外ですし、ここで挙げた手段の中では最も費用がかかります。しかも、7同様、実家を離れることになるだけに、たとえ希望しても、保護者の方の了承が得られるとは限りません。でももしその機会に恵まれれば、経験してみる価値はあると思います。

以上が、通学圏内に予備校がない方がとれる方法の一例です。参考にしていただければ幸いです。尚、1〜6のいずれかの方法をお選びになった方に、共通しておすすめしたいことがあります。それは、夏休みの2週間、いや1週間でも結構ですので、「志望校の近くの」予備校の夏期講習を受講することです。「志望校の近く」というのは、同時にオープンキャンパスにも参加してほしいからです。例えば、北海道のある市町村に住んでいる方で、早稲田、立教、法政、駒澤大の受験を考えている場合、大手予備校の札幌校だけではなく、都内の予備校にも行く、ということです。

遠距離とはいえ、志望校を一度も見ないまま受験するのはリスクがありますし、かといって、都内在住の方ほど機会はありません。ですので、夏期講習の受講と同時に、大学も見学してほしいのです。滞在期間中に、希望する大学のオープンキャンパスの全てには参加はできないかもしれませんが、校舎の前まで行くことはできるはずですし、入試(広報)課に行っていただければ、個別に案内してくれるはずです。それだけでも雰囲気がわかりますので、十分意義があります。むしろ、オープンキャンパスよりもリアルに伝わってくるかもしれません。

私がこれをすすめるもう1つの理由が、「井の中の蛙」にならないためです。通信講座や映像授業だけの勉強では、「受験の本場」である首都圏の予備校を、何より他の受験生を目の当たりにする機会が限られます。自分のやってきたことは通用するのか、ライバルとなる首都圏の受験生はどんな勉強をしているのか、よりよい勉強法はあるのかなど、いろいろな意味で受験本番に向けてのいい刺激になると思います。よかったら検討してみてください。もちろんそういう意味では、冬期講習を受講する手もありますが、受験直前期でもあるため、かえって体調を崩したりしては大変ですので、あまり強くはおすすめしません。やはり夏期の方がいいと思います。

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