受験校の決め方

志望する学部・学科が決まった上で大学を選ぶ場合、普通は「ここにはぜひ行きたい」と思える大学に注目することになりますので、言わば「大学選び=志望校選び」であり、「志望校=上位志望校(第1〜第3志望校)」だという暗黙の了解があります。ただ、たとえ上位志望校は決まっても、希望すれば必ず入れるわけではない以上、上位志望校のみ受験するというわけにはいきません。そこで、上位志望校をふまえた上で、中位以下の併願校まで含めた最終的な受験校をどう選び、どう組み合わせればいいかについてのご提案をしたいと思います。


1.受験校を選ぶ前に

受験校を選ぶにあたって、まず確認してほしいことがあります。それは、

?現在希望の学部・学科で本当に大丈夫か?

?自分にとって、大学選びの条件及びその優先順位は何か?

?自分にとっての「理想」と「着地点」とは?

です。どれも当たり前のことなのですが、毎年何人かは、「直前期の今になって、迷いが出てきた」などと言ってきます。自分の将来がかかっているだけに、「本当にこの選択でいいのだろうか」と自問自答する人が多いようです。でもこれは非常に重要なことです。むしろ、何の迷いもなく受験校や学部・学科を決め、合格していざ入学したら、「思っていたのと違った」ために、休学や中退をするのでは何にもなりません。そこまでしないまでも、キャンパスライフに張り合いを感じなくなるだけでももったいないと思います。それでアルバイトに明け暮れたり、ダラダラ過ごしたりしたところで、楽しくはないと思います。こうならないためにも、まずはこれらの基本事項の確認から始めてください。

また、学部・学科選びの際に注意することは、希望するジャンルの勉強が、どの大学でも同じ学部の同じ学科でできるとは限らないため、学部・学科名だけで絞り込まないことです。例えば、歴史を学びたいので文学部史学科を調べているとします。でも、歴史が学べるのは何もそこだけではありません。例えば人文学部の中に歴史コースがあったり、欧米研究(西洋史)、アジア研究(東洋史、日本史)、比較文化学科などでもできますし、教育学部の地歴系の学科でも学べます。もっとも教育学部の場合、教育学的な内容や、地理学、社会科学系の内容なども必修になりますので、必ずしも歴史を中心に学べるとは限りません。でも教員になりたいのであれば、どのみち教職課程を取ることになるため、こちらの方がいい場合もあります。また、観光学を学びたい場合、現時点では、観光学部は立教など一部の大学にしかありませんが、経済・経営・商学部の中に観光学コースを設置している大学はいくつかあります。ただ、すぐには見つけにくいため、「観光学部」という名前だけにこだわらずに探してみるといいと思います。さらに、今後も観光学部の新増設や、学部改組により、「観光学コース」が「観光学部」に格上げされることもありえますので、最新情報にも注目してください。

尚、?の内容について確認したい方は「学部・学科選び」のページを、?については「大学選び」のページで詳しく扱っています。これらをご参照いただき、自分にとってどの条件の優先順位が高いのか、どの条件が揃っていなくても多少は目をつぶれるのかについてしっかり吟味し、最終判断をしていただければと思います。将来がかかっているだけに、非常に重要です。このページではこれから?をふまえながら、受験校選びへのアプローチをしていきます。

2.受験校の候補を挙げる

次に、受験したいと思う大学をレベル別に挙げてみてください。現段階では絞り込む必要はありません。何か紙を用意し、興味のある大学があったら片っ端から書いてみてください。できれば、それぞれの大学が、自分にとって優先したいどの条件が揃っているから選んだのかも一緒に書いておいてください。第一志望校はともかく、その条件によっては、併願校として受験するかどうかが決まることになるからです。また、この段階で絞り込む必要がないのは、受験科目や受験日程などにより、必然的に絞らざるを得なくなるため、この段階で絞ると、状況によっては追加で探すことになり、かえって効率が悪くなるからです。

また、この時重要なのは、受験校を

●本命校(上位志望校、チャレンジ校)

●実力相応校(中堅校)

●「滑り止め」校(安全校)

の3つのレベルに分け、それぞれについて候補を挙げることです。いくらMARCH以上の大学に行きたいとしても、早稲田とMARCHだけ、というのでは、全滅の可能性があり、もう1年受験勉強をすることになるかもしれません。受験校を決めようという段階で、既に模試の志望校判定では早稲田がAなりB判定が出ているのであればともかく、そうでなければ、第一志望校に合格するためにも、そのためのモチベーションを維持するためにも、ぜひこの3つのレベルのそれぞれについて、受験校の候補を決めてください。

3.志望学部によっては、第二志望の学部も決めておく

例えば農学部や獣医学部のように、そもそも学部を設置している大学自体が少ない場合は、第二志望の学部も決めておくと選択の幅が広がります。本来なら、理学部の生物系の学科が一番いいのですが、その場合は、数学が?Cまで必要になります。元々私大の農学部や獣医学部しか考えていなかった方は、おそらく?Cは学習していないと思いますので、誰にでもおすすめできるわけではありません。もし国公立大を考えていて、?Cの勉強を今でも続けているようであれば、ぜひ理学部も検討してみてください。たとえ?Cを学習していなくても、例えば生命科学部や動物学科など、大学によって名前は違いますが、?Bまでで受験でき、かつ近い内容の研究ができる学部・学科もありますので、検討してみてください。さらに言えば、大学によっては、理工学部または工学部にもバイオ系の学科があり、その学科だけは?Bまでで受験できる、というところもゼロではありませんので、それらも調べておいてください。全ては「今年で決める」ためです。たとえ「もう1年かけてでも農学部や獣医学部に行きたい」と思っていても、第2志望の学部・学科も受験し、これらの結果が出てからどうするのかを決めても遅くはありません。また、その他外国語学部英語科と文学部英文科と国際学部、経済と経営と商学部などは、内容によっては十分併願可能な組み合わせです。自分にとって有利に働くようにするには、どう選んだ方がいいのかをよく考えた上で、理想的な組み合わせを考えてみてください。

こんな時どうする?

たとえ受験校がある程度決められたとしても、日程などの詳細を確認してみますと、どうすればいいか迷うことが少なくないと思います。そこで、よくある事例と、実際にそうした事態が起きた際にどう解決すればいいかについてのご提案をしたいと思います。それでは、具体的にみていきましょう。

1.3日以上試験日が連続したら?

私は普段、生徒には、3日以上連続する場合は何とか調整するようすすめています。もし「大丈夫です」と言ったら、「それなら、もし3連休が全て模試だとしたら体力的に持つと思う?」と最後に聞きます。これが、3日間連続で試験日だった場合の、一番実感がわくイメージです。そうすると、大半は「それは確かにきついですね」と言って調整しようとします。でも、中にはそれでも大丈夫だと言ったり、調整したくてもこの3校はどれもはずせないので、厳しいのを承知で受験を決めたりする生徒もいます。もっとも、その場合はやむを得ないかもしれません。でも、さすがに4日以上連続になると、何としても調整を促します。これは、連続している時だけでなく、その後の日程にも大きく影響するからです。肉体的にも精神的にも良いはずがありません。

ただ、調整といっても簡単ではありません。おそらく、どれから手をつけていいのか迷うと思います。これには「正解」はなく、生徒によって臨機応変に対応していますが、しいて言えば、私は何よりもまず、連続日の真ん中の日を外せないかと考えます。そして、本命校を動かすのはさすがに抵抗が強いため、「本命校を変えるしかない」と本人の口から出ない限りは、なるべく私からは口にしないようにしています。その上で、「実力相応校 → 滑り止め校 → 本命校」の順に、別日程への移動や受験校の変更を考えます。ただし、明らかに現時点では届かないレベルの大学(つまりチャレンジ校)である場合、日程をきっかけにあきらめてもらうことはあります。こうした仕事をしていますと、毎年何人かには「引導を渡す」ことをせざるを得ないのですが、将来がかかっているだけに、毎度のことながらどう話を展開させればモチベーションを下げずに納得してもらえるかには、かなり神経を使います。でも、日程が合わないと「縁がなかったのかも」と思ってくれることが多いです。

それはさておき、実力相応校から動かそうとするのは、本命校は本人の「重大な決意」が必要ですし、滑り止め校は、本命校とは違う意味で重要な役割を果たしますので、外してほしくないからです。それに、いくら重要とはいえ、滑り止め校を探し直すためにさらに検討する、というのはやはり気が進まないと思います。その点実力相応校なら、知名度のある大学もありますので、探すのは滑り止め校ほどいやではないと思いますし、数もある程度はありますのでむしろ探しやすいと思うからです。いずれにしても、連続受験はできる限り回避し、どうしても無理なら、せめて3連続を1回まで、それも体力のある最初の3日間か、「ラストスパート」と割り切れる最後の3日間しておくことをおすすめします。

2.上位志望校で試験日が重なったら?

同じ日に2校は受験できませんので、当然ながら日程の調整が必要です。鍵を握るのは、重なっている大学のそれぞれの志望順位と、検討しているタイミングでの成績、そして入試日以外の条件です。

第一志望校とどこかが重なっていれば、さすがにもう片方の大学を断念せざるを得ないでしょう。ただ、現時点では第一志望校と自分の成績とのギャップが大きすぎるのであれば、そろそろ現実的な選択をせざるを得ないかもしれません。また、たとえそこまでのギャップはなくても、第二志望校や滑り止めなど、捨てがたい大学と重なる場合は迷うところでしょう。

第二志望校を断念した場合、第一志望校とそれ以外の大学との思い入れの差が生じかねないため、よほど納得できる第二志望校を新たに見つけないと、今後の勉強や、第一志望校の受験の際に、余計なプレッシャーがかかるかもしれません。また、いくら滑り止め校とはいえ、やりたい勉強ができ、雰囲気も悪くなく、問題や配点の相性がよかったり、自宅から近かったりすれば、「受けても悪くない」と思うかもしれません。ですので、第二志望校と重なった時とは違う意味で迷うと思います。また、第一志望校に限らず、例えば第二と第三志望校とが重なっても同様に迷うでしょう。そこでまずは、あきらめなくて済む方法から模索してみてください。具体的には、下位志望校の方から、重なっている日以外に入試日程がないか、あればいつなのかを、募集人員も含めて確認することから始めてください。そして、そちらへ移動することが可能かどうか検討してください。ただし、遅い時期の入試(2月後半〜3月)やセンター利用入試、全学部入試などは、上・中位志望校はもちろん、滑り止め校すら合格の可能性が低くなることは念頭に入れておいてください。

もし他の日程がなかったり、あっても別の大学の受験日と重なっていたりした場合は、残念ですがやはりどちらかをあきらめざるを得ません。成績がどうであれ、第一志望校は絶対に変えたくないという場合は下位志望校の方しかありませんが、現実を考慮できるのであれば、第二志望校を繰り上げると同時に、新たに「本命校」として考えられる大学がないか、一応探してみてください。もし第一志望校以外の大学同士で重なった場合は、重なった大学の資料やホームページ等を再度見直し、どちらにするのかを再検討してみてください。おすすめは、両方の大学に実際に行ってみることです。既にオープンキャンパスに参加したことがあったとしても、改めて行ってみてください。前回とは違った視点で見ることができ、新たな発見があるかもしれません。

3.本命校の合格発表日より滑り止め校の手続き締切日が早かったら?

本命校の合格発表日よりも前に、滑り止め校の手続き締切日がきてしまうと、中位志望校のどこかに合格していないと、滑り止め校に入学手続き、つまり入学金や授業料などを支払わなくてはいけなくなります。支払方法は大学によります。最初にまとめて入金させて、辞退したら返金する大学もあれば、時期を複数に分割する形で入金させる大学もあります。ただ、いずれにしても、授業料などはともかく、入学金が戻ってくる可能性はほぼないため、結果によっては無駄になりかねないお金が発生します。お金を出してもらっている以上、できればこのような形での出費は避けたいところですが、これを解決する方法は主に4つです。

1つ目は、合格発表日が、滑り止め校の手続き締切日よりも早い大学を受験することです。これが一番わかりやすいものの、もし希望に近い大学がない場合、入試日自体は変えられない以上、あきらめるか、「日程の条件が合えばどこでもいい」とばかりに無理やり受験するしかありません。でもそれはあまり現実的ではありません。

2つ目はその逆で、手続き締切日が、本命校の合格発表日よりも遅い大学を受験することです。これが一番現実的ですが、問題があるとすれば、日程面の融通が利く代わりに、何らかの妥協を強いられるかもしれないことです。特に、受験を断念する大学が、問題や配点の相性が良かったり自宅から近かったりと、捨てがたいメリットがある場合だと、なおさら迷うところです。でも、無駄になるお金は少なくとも30万円と、決して小さい金額ではありませんので、ここは親孝行だと思って、まずはこの事態を回避できそうな大学を検討しましょう。

3つ目は、上の2つの間をとるやり方で、合格発表日が滑り止め校の手続き締切日より早く、手続き締切日が本命校の合格発表日より遅い、いわば「橋渡し」の役割を果たす大学を受験することです。こうすれば、候補にした滑り止め校を断念せずにすみますが、受験日も含め、そううまくいくような大学が見つかるとは限りませんが、探してみる価値はあると思います。

そして4つ目は、立場上、あまり私の口からおすすめはできませんが、他の大学も検討したけど、どうしても捨てがたいという場合は、保護者の方に、受験校についてと、状況によっては無駄になるお金が発生するかもしれない旨を話した上で、それを了解してもらうよう頼むことです。そのためには、回避する方法を出来る限り検討し、今までもこれからも真面目に勉強に取り組み、合格のために出来る限りのことをすることが大前提ですが、それでもどうしても避けられないようであれば、大事なことですので、よく相談してください。

4.第一志望校の全学部入試と第二志望校の一般入試との日程が重なったら?

この場合も、かなり迷うと思います。全学部入試とはいえ、第一志望校です。それなら、たとえ合格の可能性が低くても、チャンスがあれば全ての日程を受けたいと思うでしょうし、かといって、一般入試より合格の可能性が低い全学部入試を受けるために、同じく大事な第二志望校の受験を断念して本当に大丈夫か? という不安もあると思います。どちらも気持ちはよくわかりますが、もし私がこのことについて相談されたら、第一志望校の全学部入試ではなく、第二志望校の一般入試を受験するようおすすめします。第一志望校への合格は、受験勉強の最大の目標ですが、第二志望校も重要であることには変わりありません。そんな第二志望校の受験を、一般入試よりも合格が難しい、全学部入試を受けるために犠牲にするのはもったいないと思いますし、最悪の場合、両方ともに落ちることになると、精神的にはかなりショックだと思います。それなら両方とも一般入試を受けた方が、どちらかが合格する可能性はその分上がるはずです(あくまで可能性ですが)。もっとも、これは人それぞれで、正解があるわけではありませんし、私も生徒によっては、例外的な対応をするかもしれませんが、基本的にはこう考えます。

5.いきなり本命校の入試から始まる日程になってしまったら?

本命校の入試からのスタートは何としても回避してください。いきなり本命校ではリスクが大きすぎます。初回がゆえのミスや失敗がもしあれば、致命的な結果になりかねません。ただでさえ、入試初日で緊張しているのに、いきなり本命校では、さらにプレッシャーがかかり、精神的に強いと思う方ですら、本来の力を発揮するのは至難の業です。そして、何より私が心配しているのは、初日が本命校だということは、その分合格発表日も早いということです。そこでいきなり合格すれば、多くの受験予定校を残し、受験生活が早々と終了できますので最高ですが、もし不合格であれば、数多く残している受験校を、「本命校に落ちてしまった」という気持ちを引きずったまま受験しなくてはなりません。気持ちを切り替え、前向きに取り組むには、余程の精神力が必要です。そうなるのがいやであれば、何とかして、本命校の前に1校でも2校でも多く入れてください。本当は、本命校が2、3番目でも不安ですが、それでも初日になるよりはましです。それでもどうしても初日にならざるを得なければ、まずはその本命校の、別の日程での受験も考えてください。既に全ての日程を考慮しているのであれば、可能なら、その大学以外で、遅い日程で入試を行う本命校をもう1校増やすことをおすすめします。それも難しいようなら、もはや仕方がありませんが、上記のような心理状態になりかねないことを覚悟した上で、受験に臨んでください。

6.受験校を決めたのに、後で不安になったら?

決していいかげんな気持ちで決めたわけではなく、自分なりにいろいろな要素を踏まえて検討した上で受験校を決めたはずなのに、時間が経つとやっぱり不安になり、「本当にこれで大丈夫だろうか。第一志望校に合格できるだろうか。全滅したりしないだろうか。」などと思いをめぐらし、勉強が手につかなくなる、という生徒が毎年います。もちろん理由は人それぞれですが、これは必ずしも、受験校の決め方が悪いのではないと思います。

受験生である以上、合格しないと不安は完全には払拭できません。ですので、受験生がある程度の不安を抱えているのはいわば普通のことですが、その不安をできる限り和らげるには、結局は模試で結果を出すしかないのです。そして、模試で結果を出すには、普段から必死で勉強し続けるしかないわけで、そう考えると、勉強することでしか不安を和らげる方法はない、ということになります。でも、ここで問題なのは、不安がつのると勉強が手につかなくなることです。これはメルマガでもご紹介したのですが、合格してきた生徒ほど、悩んでいても手は止めません。そう考えると、このままでは結果に影響しかねないので心配です。そこで、もしこうした不安がぬぐえずに困っている方は、ぜひ滑り止め校をもう1校増やしてみてください

第一志望校に合格するかどうかも不安だとは思いますが、おそらく最大の不安は、全滅することへの不安だと思います。つまり、受験校を決めたのに不安が消えないということは、滑り止め校が「滑り止め」の役割をあまり果たしていない、つまり「この大学さえ受験すれば、もう1年受験勉強をしなくても済みそうだ」と心からは思えない、ということかもしれません。確かに、滑り止め校をいくら慎重に選んでも、何校受験したとしても、不安を完全には払拭できないかもしれません。でも、少なくとも現状では不安は和らがないということですから、さらに増やすか、あるいは、増やさない代わりに、現状の滑り止め校よりも、さらに可能性がありそうな大学に変更するかしないと解決しないでしょう。ただ、あまりに滑り止めの偏差値を下げすぎると、今度は「そこには行きたくない」という気持ちの方が強くはたらくことがあります。そこで、一番現実的なのは、組み合わせは変えずに単に1校でもいいので増やすことだと思います。日程が多少きつくなりますので、あまり増やさない方がいいですが、1校くらいなら大丈夫だと思いますし、それで少しでも安心できれば、再び勉強に集中できると思います。そうなれば、おのずと結果はついてくると私は信じています。

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