理科・地歴・公民の勉強法

ここでは、「○○式勉強法」の提唱者や、あらゆる予備校講師や私のような予備校職員、高校教員まで、受験に携わっている立場であれば、誰もが共通でおすすめしている「基本中の基本」の理科・地歴・公民の勉強法を科目ごとにご紹介いたします。「英語や数学の勉強で手一杯で、とても物理や日本史までは手が回らず、どうしていいかわからない」という方は、まずはこれらを参考にして、「必ずやるべきこと」を確認してください。

1.高3の1学期までは、定期テストごとに範囲の内容をしっかりこなす

やるべき科目の優先順位を考えますと、高3の1学期までは、どうしても英語が最優先になります。他の科目と比べて、英語をマスターするのはかなりの時間と問題量が必要だからです。ですので、当面は、自主勉強の時間の大半を英語に費やしてください。理系の方は+数学ということになりますが、理系の方は意識しなくても数学の勉強はやると思いますので、英語は意識的に行ってください。それでも浪人生は、高校生よりも時間があるので、英語中心にしても、他科目をやる余裕もあると思いますが、高校生の場合は、他の科目がどうしてもおろそかになりがちです。特に国公立大志望者にとっては、やるべき科目が多いだけに、心配になると思います。そこで、理科・地歴・公民については、まずは高校の通常授業を大切に受けてください。そこで習った内容をしっかりおさえ、定期テスト前に集中して勉強すれば、たとえ普段の貴重な自主勉強の時間の多くを英語に費やしても大丈夫だと思います。あとは、細切れ時間でも結構ですので、見直しの機会を適度に設ければ、せっかく覚えた重要事項を忘れずにすむでしょう。そういう意味では、理科・地歴・公民の授業中に、英数の時間に備えて寝たり内職をしたりする、というのではあまりにもったいない、ということになります。

2.理科はまず?の分野を完璧にする

受験で使う方はご承知の通り、理科には?の分野と?の分野とがあります。高校によって、?の分野を一通り学習してから?の分野を扱うカリキュラムになっているところもあれば、単元ごとに?の分野と?の分野との両方を扱ってから次の単元を扱うところもあります。もっとも予備校の授業の場合、?のみ必要な生徒もいれば、?まで必要な生徒もいるので、それぞれが別のカリキュラムになっています。いずれにしても、センター試験では?のみが単独で出題され、内容的には?の分野の理解が不十分だと?の分野を理解するのが困難である以上、本格的に?の分野を勉強する前に、まずは?の分野を完璧にしておきましょう。講師の中にも普段の授業でそれを強調している人がいます。理想はセンター試験で満点が取れるくらいの自信がつくことですが、現実的には、そのレベルになるまで?をまったくやらないわけにはいかないでしょう。でも、せめて8割はキープできるくらいでないと、いくら繰り返し繰り返し問題集を解いても、結局?の分野が不十分であることが「ツケ」として回ってくることになるのです。

3.物理は力学、化学は理論、生物は遺伝について、早いうちにこなす

例年いろいろな生徒を見てきましたが、一概に言って、理科は、上記の単元を苦手にしている人が多いという印象があります。この点については、市販の受験本にもよく記載されています。例えば「物理は一番やっかいな力学を最初の方で習うので、『自分には向いていない』と思い、他科目に替えたり文転したりしたくなる人もいるかもしれないが、物理は力学さえ乗り越えれば、そんなに大変な科目ではない」といった内容です。私もその通りだと思います。ですので、あまり理科に時間がかけられないようなら、せめてこうしたやっかいな単元の?の分野だけでも、早いうちにマスターしておけば、2学期以降がとても楽になります(もっとも、生物の遺伝は後の単元になるので、1学期中のマスターは大変かもしれませんが)。受験生に限らず、日本人全体の特徴なのかもしれませんが、どうもやるべきことにメリハリや優先順位をつけてこなすより、まんべんなくこなすことを好む人が多いような気がします。もしかしたら、私もそのタイプかもしれませんが、少なくとも、まんべんなくこなすより、メリハリをつける方が成績は上がります。英語のように、長い時間をかけてコツコツ積み上げる必要がある科目もあれば、歴史のように、短期集中の方が効率がいい科目もあります。科目によって性質・特徴が違いますので、それに合わせてこなす方が、限られた時間内で効率よくこなすことができるからです。

4.地歴・公民は細切れ時間を有効活用して覚える

私の職場で毎年のように見かける光景ですが、勉強しているようすを見に行くと、いつも地歴・公民(特に日本史・世界史)ばかりやっている人がいます。これではいつまで経っても成績は上がりません。たとえ一時的にも地歴・公民の点数が上がっても、最終的には失速します。こうなる主な理由は3つあります。
1つ目は、英語が苦手であることの裏返しです。つまり、地歴・公民に定着しきれていない穴があることを大義名分に、英語の勉強から逃げている人が多いのです。でもその結果、英語がおろそかになるようでは、いつまでたっても手応えは掴めません。2つ目は、要は歴史が好きだということです。これは公民や地理受験者と比べて圧倒的に多いのですが、受験勉強であることを忘れて、まるで文学部史学科の学生であるかのように歴史を楽しんでいるのです。大学生になってからならともかく、受験生が歴史だけ勉強するのでは、結果として科目ごとの学習状況にムラができてしまい、合格からは遠のいてしまいます。


そして3つ目の理由こそ、ここで特に申し上げたいことですが、たとえ一度にたくさんのことを覚えても、何日かすればあっという間に忘れてしまうため、そのことに対する危機感から、 他科目の勉強をする余裕がなくなり、結局地歴・公民ばかりやるようになるからです。これは、1〜2時間程度では覚えられないからと、例えば日本史の用語を3時間かけて覚えたとしても、時間が経つと忘れてしまうため、後日それらを確認するためには、結局同じ3時間くらいの時間が必要になるからです。でも、覚える時間を増やせば増やすほど、確認する時間も増えるということは、こうした勉強を続けていくと、地歴・公民の勉強をがんばればがんばるほど危機感が大きくなり、本来なら最も重要でかつ、定着に時間のかかる英語の勉強に時間をかける余裕がなくなってしまうというジレンマに陥ってしまうのです。

そうならないようにするには、地歴・公民のような暗記を伴う科目は、量よりも回数で覚えることです。つまり、1時間かけて50個の内容を覚えようとするのではなく、同じ1時間なら、「50個の内容を20分かけて一通り確認する」ことを、1日3回こなす方が覚えやすいのです。これを効率的にやるには、1日の中にある隙間時間(移動中の電車内、トイレ、食後、休み時間など)を活用することです。もっとも、これは地歴・公民に限らず、英単語・熟語にも言えることですが、隙間の時間に「小さく覚えて小さく確認」を毎日繰り返すことがポイントです。

5.歴史は近現代史から仕上げる

どうも高校の歴史の先生は、授業計画通りに授業をするのが苦手な人が多いようです。毎年のことなのに、なぜか古い時代に時間をかけすぎてしまい、肝心の入試に良く出る近現代史までたどりつくのに年末近くまでかかってしまう、なんてことがよくあるからです。これでは高校生に不利です(もっとも浪人生も、近現代史は高3の秋から年末近くまでで習っただけで、それ以来やっていなければ、条件はほぼ同じですが・・・)。そこで、高校生も浪人生も、古代からの復習と同時進行で、近現代史も各自で始めてください。近現代史から古代へさかのぼって勉強してもいいくらいです。長い目で見ると、その方が点数も合格の可能性も上がります。現在の授業の復習が気になるかもしれませんが、それは上述の通り、毎回の授業をしっかり聞いた上で、定期テスト前にまとめてやれば十分です。もし時間的に余裕がなければ、近現代史はほとんどの予備校の夏期講習で開講していますので、もしタイミングが合うようでしたら、そちらを受講してみてください。それだけでも全然違います。

6.地理は必ず地図帳を用意し、位置を確認する

これは必須です。野球の練習をするのにバットとグローブとボールが必要なのと同じくらい当たり前のことです。にもかかわらず、参考書にマーキングをしたり、ひたすら問題集を使って解いたりすることしかやっていない方が少なくないのです。でも、出来る地理の教師や講師ほど、説明するだけでなく、たとえ生徒が面倒くさがっても、逐一地図帳で位置の確認をさせています。地理はそれをやってなんぼの科目です。決して面倒くさがらず、わからない単語を辞書で調べるのと同じくらいのつもりで取り組んでください。それをひたすら繰り返すだけでも、取れる点数に差がでてくるはずです。やはり地理には地図帳がつきものなのです。

7.政治経済は時事問題がポイント。いま世間で何が話題になっているか
  常に新聞などで確認しておく。

政経は、範囲がさほど広くなく、かつ出題されるところがある程度決まっていますので、歴史ほどの負担はなく、歴史以上に追い込みがきく科目です。でも難点が2つあります。1つは、地歴・公民の科目を、日本史または世界史のどちらかに限定するところもあるため、どの大学・学部でも使えるとは限らず、事前の確認が必要なことです。そしてもう1つは、時事問題が出る上、今現在についての内容だけに、その対策が立てづらいことです。もちろん、予備校で授業を受けていれば、それをふまえた対策はやってもらえるとは思いますが、こればかりは参考書や問題集をこなす、というわけにはいきません。新聞やテレビでかまいませんので、今世間で何が話題になっているのかを常に確認し、どういう形で出題されてもいいように、その出来事について不明なところは、その都度調べておきましょう。それだけでもずいぶん違います。それでももし不安になったら、「自分が不安なんだから、他の受験生だって、同じように不安になっているはずだ」と、あくまで「みんなだってそうなんだ」と自分で自分を励ましてください。そういう気持ちで新聞を読めば、多少は気が楽でしょうし、読んでわかったことがあれば、それだけでも他の人と差がついたはずだと、前向きになれることと思います。

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