冬期講習を取らないと決める前に・・・

もし「冬期講習は取れない・取りたくない」という方がいらっしゃったら、ちょっと待ってください。この場を借りてそんな方々にメッセージを送りたいと思います。「取らない」と決めるのはいつでもできます。これを読んでからでも遅くないと思います。冬期講習について、どう判断するのかはもちろん自由です。とはいえ、毎年、冬期講習を取る代わりに、さぞ必死に勉強しているかと思いきや、結局冬期講習受講者と大して変わらない程度の勉強量に留まり、冬期講習受講者よりも時間があるのに、ダラダラ・クヨクヨしているだけとしか思えないような直前期を迎え、合否の結果も中途半端で終わってしまった生徒を何人か見てきており、そのはがゆさから取り上げるのだということはわかっていただきたいと思います。

いずれにしても、わずかな人数とはいえ、毎年「冬期講習は取れない・取りたくない」という生徒が夏期講習の時よりいます。でも理由は毎年似通っています。そこで主な理由と、私がそうした生徒にどんな話をしているのかをご紹介し、そうした方へのメッセージとさせていただきます。受験本ではむしろ、「冬期講習なんか取る必要はない。この時期はとにかく赤本 (過去問)を解きまくれ!」などと書かれているようですが、どちらの考え方に賛同するかを検討する材料にしていただければ幸いです。

1.夏ほど気合を入れなくても勉強に集中できる

夏期講習は、蒸し暑さや誘惑に負けないための、いわばイベントのような役割も果たします。ですので、取らない人は若干いるものの、最終的には、高い意識のもとで多くの生徒が受講します。これに対して冬期講習は、入試直前期にもかかわらず、夏期講習以上に、取ることに慎重な生徒が多いように思います。確かに、冬は夏と違って、何もしなくても体力を消耗するような気候ではなく、寒さを暖房でしのぎ、風邪やインフルエンザに注意さえすれば、受験生にとっては学習面ではさほどつらい季節ではありません。「受講してもし校内や外で菌をもらってきたら元も子もないので、自宅で勉強しているに越したことはない」などと考える方もいるかもしれません。それはよくわかるのですが、適度の緊張感があり、気が張っている時というのは、意外と風邪やインフルエンザにならないものです。むしろ、自宅という「快適な環境」の中で勉強しているのに、その快適さから気が緩んだ時にかかることがよくあるのです。実際、毎日のように予備校に通ってくる生徒はめったに風邪をひきません。そう考えますと、健康管理や予防注射等の備えはもちろんですが、冬は夏以上に気合を入れるくらいがちょうどいいですし、そのきっかけとして冬期講習を活用するのは良い方法だと思います。

2.夏期講習で講座を取りすぎて、自分の勉強時間が取れなかったため、中途
  半端な勉強となり、失敗したと思っている

このタイプの人はたいてい、「1」のように、夏期講習では、この夏を乗り切ろうと講座を色々取ったものの、結局こなしきれず、その原因を自分自身の計画性や実行力の不足にあるとは考えず、単に「取りすぎたから失敗した」と思っています。だから冬期講習では、必要以上に控えめにするのです。気持ちはわからなくはないですが、この時期に考えてほしいことは、勉強量を減らすことではなく、勉強すべき内容について、限られた時間でどうこなすかです。

実際、こう言う人がいる一方で、同じくらいの講座数を取った人の多くは、冬期講習もちゃんとこなします。その差はまさに、学習計画の立て方と実行力・継続力にあると言えます。そして、こなせる受験生がいる以上、こなしきれずに学習内容を減らした(つまり冬期講習を取らなかった)人が、同じ量でもちゃんとこなせた人に勝って合格するのは難しいと思います。本当に取りすぎであれば、こちらから止めます(実際毎年います)。また、「予備校も商売だから、言葉につられて取らされるな」という受験本の著者がいますが、夏期・冬期にかかわらず、予備校側が講習を過剰に取らせて、もし学習体制が崩れて合否に影響すれば、かえって逆効果ですので、そんな無謀なことはしません。そこまでして取らせる理由やメリットがないからです。ということは、たとえ自分では取りすぎだと思ったとしても、こちらから見れば妥当な講座数だということなのです。

3.冬休みから入試直前までは赤本(過去問)を解きまくることに専念したい

このタイプの人は、「夏休みに乗り越えるべきは暑さなら、直前期に乗り越えるべきは、寒さより入試直前によるプレッシャーで、それを払拭するには赤本を解きまくるのが一番であり、冬期講習をそのための起爆剤にしなくてもいい」と思うようです。気持ちはよくわかりますし、過去問を解くことはとても大事ですので必ずこなしてください。でも、厳しいようですが、これは直前期の受験生ならやって当たり前のことです。はっきり言って、さらに先を行っているライバルが全国にいる以上、直前期にただ過去問対策に専念するだけでは、特に難関大を目指す方にとっては不十分です。過去問を解いた手応えや間違えた問題の傾向をふまえ、残りの期間でどうすればいいかを考えた上で、必要な対策を講じてこそ、ライバルに勝つための勉強ができるのです。


とはいえ、上記の通り、予備校関係者ではない著者の受験本では、夏期講習もさることながら、「冬期講習なんか取る必要はない。この時期はとにかく赤本(過去問)を解きまくれ!」などと書かれているものが多いのも事実です。それはおそらく、著者の実体験に基づくものだと思います。しかも、開成や灘など、予備校に行く必要がないくらい受験対策を徹底的に行うカリキュラムを持つ、全国トップクラスの進学校出身で、そもそもそういう高校(または中学)に入れるだけの頭脳を持つ人の意見だということを念頭に置いた上で、参考にしていただきたいと思います。私はあくまで、「その他大勢」の視点で話しているつもりです。

いずれにしても、限られた時間で傾向と対策を一気に掴むには、やはりある程度冬期講習を取った上で、合間の時間でどう効率よく勉強するかを追求した方が、むしろ効率的だと思いますし、講習だとインパクトがある分忘れにくくなります。「赤本での手応えをふまえて冬期講習を受講し、受講して得た内容をふまえてさらに赤本を解き、さらに得点率を上げる」というサイクルを維持し、合格を手にしてほしいと思います。

4.いろいろやろうとすると、全てが中途半端になるので、直前期にあえて
  新しいこと(冬期講習受講)はしたくない。

「3」に似ていますが、「3」は真面目な生徒でも該当する人がいるのに対し、これはどちらかと言うと、怠惰なタイプの生徒ほどこの言葉を都合よく口にするような気がします。厳しいようですが、「冬期講習を取ることで勉強の全てが中途半端になる」とすれば、単純に勉強のやり方に問題があると思います。それが証拠に、上述の通り、大半の生徒はこれらを両立させていますし、両立できた相手と入試本番では勝負するのです。それだけでも、どちらの方がが勝つ可能性が高いかは一目瞭然です。それに、冬期講習には特に「●●大英語」「最終チェック!」といったタイトルの講座が多く、そのテキストは、どの予備校でもターゲットの大学の過去問をもとに制作されています。そのため、新たに問題集を買ってやるのとは意味が異なり、「新しいこと」には当たらないと思います。むしろ、志望校の出題傾向をふまえた問題や、他の大学で出題されてもおかしくない「有名な問題」を扱っているので、やっておいた方が得です。いずれにしても、全てが中途半端になるので何かに絞るのではなく、中途半端にならないようにするにはどう工夫して勉強すればいいのかを考えるようにしてください。そうすれば、おのずと結果はついてきます。

5.高校でも講習や補習があるので(ほぼ必修)、冬期講習まで取れない

実際に毎年こういう生徒はいます。でも、大半の生徒は、高校で取る科目と予備校で取る科目との住み分けを考えて、効率よく取っています。まずは住み分けができるかどうかを確認してみてください。高校での講習・補習の日程や内容がギリギリにならないとわからないようなら、それらがわかり次第取ってもいいのです。尚、予備校によっては、もし申込後でも講座変更が可能であれば、先に申し込んでから、講習・補習の日程と重なることがわかった時点での変更をおすすめします。人気のある講座の場合、日程がわかった時には締め切りになっている可能性があるからです。

6.取っても意味がない(変わらない)

これも、普段からあまり勉強しなかったり、遅刻・欠席の多かったりするなどの、怠惰なタイプの生徒ほど言うセリフです。入試を直前に控えているにもかかわらず、はっきり言って現実逃避です。考えてみてください。そもそも、受験生を第一志望校に合格させることが目的の予備校で、入試間近の一番大事な時期に、受講する意味のない講座を開くと思いますか? 予備校は、受験に関係することしかやらない、それ以外のことは一切やらないことで、高校と差別化しています。その予備校で、一番大事な時期にわざわざ意味のないことはしません。そもそも、直前期に冬期講習を取る意味を見出せないようでは、第一志望校への合格は厳しいと言わざるを得ません。実際、今までに合格してきた生徒で、この時期にこんなことを言っているのを聞いたことはありません。この時期だからこそ、吸収すべきは何でも吸収し、合格のためなら手段を選ばず、残りわずかの時期だからこそ何を優先してどのくらい、どんなペースでこなすのか、そうまでしてなぜ第一志望校を目指すのかを今一度自分に問いかけ、再認識する必要があります。そうすれば、なぜ冬期講習が必要なのかがわかってくることでしょう。せっかくのこの1年努力してきたのに、ここで中途半端なことをしてしまうと、結果まで中途半端になりかねません。

7.部活が忙しく、まだ受験生ではないので、取るのはまだ早い(高1・高2)

部活の大変さは本当によくわかります。ですので、物理的に受講が無理ならやむを得ません。でも毎年、「部活が忙しい」といいながらも、忙しい時期・時間帯を避けて何とか取っている人はちゃんといます。そういう生徒は、来年は勉強と部活との両立がもっと大変になることも、今から両立に慣れておいた方がいいことも、引退するまで勉強しなければ今後の成績に、そして入試結果に大きく影響することも自覚しているのです。現在高1・高2の方に、「今のうちからやらないようでは遅い」とまでは言いませんが、少しでも、せめて英語だけでも取っておけば、今後楽なのは間違いありません。少なくとも、部活でクタクタになって帰宅してから、自宅で勉強するよりははかどると思います。普通の受験生が高3の1学期、遅くとも夏休み中に固めるべき基礎を、高1・高2のうちに完璧にしておけばかなり有利です。ただし、医学部や、国公立・早慶などの難関大を目指すなら、「今のうちから勉強しておかないと間に合わない」と考えるくらいでちょうどいいと思います。

いかがでしたでしょうか。冬期講習を取らないと決めるのはいつでもできます。正式に決める前にぜひお読みいただき、参考にしていただければ幸いです。また、私がこれをすすめるもう1つの理由が、「井の中の蛙」にならないためです。参考書や問題集のみの独学はもちろんですが、通信講座や映像授業だけの勉強では、「受験の本場」である予備校に通う他の受験生が、直前期にどこまで仕上げているのか、どこまで必死にやっているのかを目の当たりにする機会が限られます。今まで自分なりにやってきたことは通用するのか、ライバルに勝てるのか、どうすればしっかり合格を勝ち取れるのかの最終確認をするなど、いろいろな意味で受験本番に向けてのいい刺激になると思います。もちろん、かえって自信をなくしたり落ち込んだりするリスクもありますが、わずかでも対策する時間が残っている分、入試本番で打ちのめされるよりは、はるかにましです。よかったら検討してみてください。

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