数学の勉強法

ここでは、「○○式勉強法」の提唱者や、あらゆる予備校講師や私のような予備校職員、高校教員まで、受験に携わっている立場であれば、誰もが共通でおすすめしている「基本中の基本」の数学勉強法をご紹介いたします。「数学をどう勉強していいかわからない」という方は、まずはこれらを参考にして、「必ずやるべきこと」を確認してください。

1.数学は、英語の次に時間をかけて量をこなす

数学は、理系はもちろん、一部の文系の方にとっても重要科目です。ですので、特に1学期は英語の次に時間をかけてほしい科目です。数学も、英語同様、できるようになるまでには、かなり時間と練習量が必要です。それでも「英語の次に」と言ったのは、特に理系の方には、次のような傾向がみられる生徒が多いため、英語以上に数学に時間をかけている(というより、結果的にかかってしまっている)方が多いと思うからです。それは、


●「?C」、特に「?」の科目自体がそもそも難しいので、その分時間もかかってしまう。
●多くの大学の問題には「難問」も含まれるため、これらが解けるようになることに力が注ぎすぎている人が多い。
●そもそも1つの大問を解くこと自体に時間がかかるため、時間を忘れて延々とやりかねない。

という傾向です。詳細は2以下でお話しますが、たとえ解けたとしても、執拗に時間をかけすぎると、かえって時間対効果が小さくなってしまうのです。その点英語は、数学と同じくらい時間をかけ続けたら、少なくとも数学以上には成績が伸びると思います。「だとしたら、なおさら数学の方に時間をかけた方がいいのでは?」と思うかもしれませんが、数学は元々、大問1つを解くのに絶対的な時間がかかるため、時間を増やすことよりもまず、同じ時間内で解く問題の量を増やすことから意識しないと、時間対効果が上がらないのです。時間を増やすのは後からでも十分です。そのくらい、数学の学習効果は、演習時間ではなく演習量が大きく影響するのです。

理系といえど、最終的に合否を分けるのは英語です。確かに、1学期から数学にある程度時間をかけて、量をこなす必要はありますが、それはあくまで、英語に数学以上の時間をかけて、1学期までに英語の基礎を完成させることとセットだと思ってください。

2.何時間もかけて難問を解く喜びを捨てる

これは、数学が好きな人ほど陥りやすい「罠」と言ってもいいと思います。これには二重のロスがあります。1つは、無駄に時間をかけることによる勉強時間のロスです。受験生の中には、受験勉強の意味を履き違え、「何時間かけてでも難しい問題に果敢に挑戦し、その努力の結果、その難問を解ききった時の達成感や、すがすがしい気持ちこそが勉強する喜びであり、意義である」と考え、ひたすら難問に取り組む人が毎年1人はいます。でもそれは大きな誤解です。考え方自体が間違っているわけではありませんが、これは研究者の考え方で、少なくとも大学生になってからやればいいことです。受験勉強では、限られた期間で最大限の効果を得るために、効率的な勉強をしなくてはなりません。同じ時間をかけるなら、量をこなすようにするか、一部を英語など他の科目の勉強に回した方が、よっぽど成績が上がります。


もう1つのロスは、難問を解くことに情熱的になるあまり、基礎固めがおろそかになってしまうことによるロスです。このロスは、時期によっては致命的です。英語同様、数学も基礎を定着させるのには、ある程度の時間がかかるからです。どんなに難問を出題する大学でも、設問を含め、少なくとも半分以上は基礎がわかっていれば解ける問題です。それらを確実に解いた上で難問が解ければ、他の受験生と差がつきます。でも、基礎ができていなければ、基礎の問題すら得点できません。基礎固めの時間を惜しんで、志望校の赤本ばかり何度も繰り返し解けば、問題自体が記憶に残るので、それをふまえて解けば大丈夫かと思いきや、いざ模試を受けると、何度も解いた種類の問題なのに、ちょっと数字や出題形式が変わるだけで解けません。この事実を目の当たりにして初めて、基礎力不足を思い知ることになります。この誤解は誰にでも起こりうることですので、ぜひ気をつけてください。

ちなみに、入試問題における「難問」とは、複数の基本事項が複雑に入り混じり、基本問題だとはわかりにくい問題のことで、実は難問も基本事項の集合体なのです。難問が解けるかどうかは、そこに気付くかどうかで決まりますし、基本ができていないと気付かないのです。

3.レベルにあった「チャート式」をこなす

書店には、ありとあらゆる参考書や問題集がありますので、「どれがおすすめか」と言われても、なかなか一概には言えません。前述の通り、万人に共通のおすすめはないと考えるからです。でも、数学の「チャート式」については、その数少ない例外です。高校や予備校の数学教師・講師はもちろん、私のような予備校職員でも、数学で「チャート式」をおすすめしない人はいないと思いますし、数学を受験する生徒なら、誰でも一度は接点があると思います。高校や予備校の授業と「チャート式」があれば十分事足りると思いますし、他にも何かこなしたい方も、まずはこれらを完璧にしてからで十分です。違いがあるとすれば、使い方とタイミングです。


「チャート式」には、レベル別に赤、青、黄、白があり、それぞれ「赤チャート」「青チャート」などと呼ばれています。赤は教科書の標準〜東大・京大レベルまで、青は教科書の基本〜国公立・私立大上位レベルまで、黄は教科書の基本〜国公立・私立大中堅レベルまで、白は教科書の基本〜センターレベルまでそれぞれ対応していますので、自分に合ったレベルのものを選んでやってみましょう。おすすめは、まずは基本例題と練習問題だけで一通りこなしてください。それが終わったら最初に戻り、その上のレベルの問題をこなしてください。そうすれば、同じ単元の問題を、レベル別に何回もこなすことができますので、次の単元の問題をこなす頃には、前の単元の内容を忘れている、といったことに最小限に留めることができ、定着もしやすくなります。

4.解けなかったらすぐに解答を見て、解き方を覚えて次につなげる

2・3に関連して、例えば数学に3時間かけるなら、わずか1,2問の難問に時間をかけて解き方を考えるより、それこそ「チャート式」を使って、わからなければ解答を見て、実際に書いて解き方を覚えてどんどんこなす方がいいと思います。そうすれば、3時間あればかなりの問題をこなせます。そのペースで1周したら最初に戻り、わからなかった問題だけをピックアップし、再度挑戦するのです。これを繰り返すとかなり解けるようになります。解けないのは単に解法パターンが頭に入っていないだけで、こうしてどんどん頭に入れていけば、「あっ、これはあのパターンとあのパターンを使って解けば大丈夫だ!」とひらめくようになると思います。これらをふまえて、「数学は暗記科目だ」という講師や受験本の著者がいるようですが、これには私も全く同感です。

5.計算力を軽視せず、ミスなく確実に解く

国公立大の二次試験のような記述式であれば、たとえ計算ミスをしても、解き方さえ合っていれば、計算ミスをする手前までは部分点としてもらえます。でもこれが、センター試験や多くの私大のようなマーク式だと話は別です。計算ミスをすると、最終的な答えが違ってきますから、違った答えの数字をマークすることになり、せっかく解き方が合っていてももちろん0点ですから、非常にもったいないのです。最悪なのは、それを最初の設問でやってしまうことです。そこで出た答えを使って、次以降の設問を解くことが多いため、結局その大問丸ごと0点になることもあるのです。


このように、解き方さえ合っていればいいというわけではありません。計算を軽視せず、普段からミスをしないように意識して問題を解いてください。問題演習の際に、「あっ、計算ミスしちゃった。でも解き方は合っているからまあいいか」などと気軽に考えたり、模試の結果が思ったより悪かった際に、「今回の模試ではけっこうミスしちゃったんですよね」と、ミスはしたけど解き方は合っていたと自己弁護し、「本来なら実際の点数よりは良かったはずだ、だから力はあるはずだ」とアピールしたりする生徒がよくいます。でも、こういう生徒ほど本番でもミスをします。1つのミスが合否に影響する怖さを知らない、もしくは怖くないふりをしているからです。

ミスをなくすためにも、上記の通り、たとえわからない問題があって、解答を見て書いて覚えるとしても、計算のところまでは写さず、そこからは自分で計算してみてください。それだけでもずいぶん違います。

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