英語の勉強法

ここでは、「○○式勉強法」の提唱者や、あらゆる予備校講師や私のような予備校職員、高校教員まで、受験に携わっている立場であれば、誰もが共通でおすすめしている「基本中の基本」の英語勉強法をご紹介いたします。「英語をどう勉強していいかわからない」という方は、まずはこれらを参考にして、「必ずやるべきこと」を確認してください。

1.基本例文を暗記する

これは文法・構文の基本を覚えることだけでなく、長文読解、下線部訳、整序問題(並べ替え)、英作文などにも活用できる方法です。参考書や問題集には、単元・項目ごとに、解説する前に必ずと言っていいほど基本例文が載っています。そして、親切なものだと、最後の方のページに、あるいは別冊で、文中で紹介した基本例文がまとめて掲載されていますので、これらをまず覚えるのです。そうすれば、その後の問題演習もスムーズに進むはずです。さらに、一通りこなした後で復習代わりに再度覚え直せば、その単元の内容は定着するはずです。そうすれば、たとえその問題集を最後に解いて以来、ある程度日数が経ってから、別の形でその単元・項目について問われた時でも、例文さえ覚えていれば「もしかして、この前覚えたあの例文を応用すればよいのでは?」という発想が生まれ、例文を覚えていることで対処できるのです。一見地味で、問題集を解くのに比べて達成感がないかもしれません。でも、語学を身につけるためには、こうした地味な暗記なり反復練習は、欠かすことのできない学習過程です。だまされたと思ってやってみてください。

2.音読は最高の勉強法

基本例文を覚えたり、その他、復習として最も効果的な方法が音読です。ここ数年で、改めて音読の効果や大切さを紹介している受験本や語学本が増えたような気がします。それくらい昔からやってきたことですが、こと大学受験対策としては、「何を今更」と思うのか、やっていない人の方が多いと思います。ですが、小学校くらいまでは、九九を音読で覚えたり、国語の教科書の音読の宿題をやったりと、毎日のように音読をしてきたはずです。特に九九は、そのおかげで今でも覚えていますし、国語にしても、古典や詩などは今でも口ずさめるものもあると思います。実際、日本人のほとんどは、「祇園精舎の鐘の声・・・」で始まる平家物語や、「春はあけぼの・・・」で始まる枕草子の冒頭などを音読させられ、今でも口ずさめる人は多いのです。それくらい効果のある勉強法のはずですが、いつの間にかやらなくなってしまったのです。実は私が受験生の時も、音読なんてしたことがありませんでした。でも、原点に返ってぜひやってみてください。毎日寝る前や起きた直後にでも、少しずつやってみてください。個人差はあるとは思いますが、必ず効果があるはずです。

3.(他の科目が後回しになってでも)1学期は英語を中心にこなす

文系・理系に関係なく、受験では英語が最重要科目であることについては異議はないと思います。ですので、おそらく当面は、英語を中心に勉強することになると思います。ただ、他科目とのバランスで迷う方もいるかもしれません。特に国公立大志望の方にとっては、他にもいろいろな科目の勉強をする必要があるので、英語ばかりに時間を使えないというのが本音ではないでしょうか。そのこと自体は間違いではないものの、どの科目もまんべんなくこなすというのでは、結局全ての科目が中途半端になる可能性があるのです。そこで、国立・私立、文系・理系に関係なく、1学期は英語+数学or国語、部活組は英語しかできなくてもやむを得ない、ぐらいのつもりで取り組み、それ以外の科目は、毎回の予備校や高校での授業及び、その予復習を中心にこなしてみてください。


実際、受験本でも、英語以外の講師ですらもそう言うくらいですので、英語中心の勉強に間違いはないでしょう。ポイントは、科目ごとに持つ特徴にあると言えます。理社は、覚えようと思えば短期集中で覚えられる反面、覚えたことを忘れないようにすることに時間と手間を要します。それに対して英語は、ある程度できるようになるまでには、かなりの時間と問題量が必要ですが、一度マスターしたら、多少勉強時間を減らしたとしても、そう簡単には忘れません。長文読解と文法、英単語・熟語のチェック、その他出題傾向に合わせた対策など、勉強時間内にやるべきこと自体は変わりませんが、勉強の質は上がっているはずなので、勘が鈍らないように、毎日少しずつでも英語の勉強時間を確保すれば、急激に成績が下がることはないでしょう(下がるとすれば別の理由です)。逆に、全科目をまんべんなく勉強した結果、英語がもし不十分であれば、2学期になっても、英語が心配で他の科目を勉強する気持ちの余裕がなくなります。ですので、1学期のうちに集中的に英語の勉強をすることで、2学期以降は、ある程度の問題演習の時間を確保しながらも、今まで英語に費やしていた勉強時間の一部を他の科目に回して短期集中を図り、覚えた内容を忘れないうちに入試を迎えることができるのです。

4.1日1問は長文読解問題をこなす

これも、日々の地味な反復練習の積み重ねにより上達する、英語ならではのやり方です。長文問題の速読速解ができるようになるための特効薬はありません。とにかく1問でも多く問題を解き続けることでしか、上達する道はないのです。また、トータルで解いた問題の数が同じだとしても、1日1問ずつでも毎日解き続けるのと、何問か一気に解く日もあれば、全くやらない日もある、というのとでは、上達度が全く違います。高校や予備校の授業の予復習を「1問」扱いにしてでも、長文問題を1問も解かない日をつくらないようにしてください。これは口で言うのは簡単ですが、やってみると結構大変です。続かないケースは主に、


A. まだ基礎が固まっていない、あるいは、文法の問題集を優先してやっているため、そこまで手が回らない。
B. 部活が忙しくて時間が取れない。
C. 単語の意味調べや、訳ができるまで粘ったりなどするため、1問解くだけでかなりのエネルギーを消耗するので、
 とても毎日はできない。

などが多いと感じています。どれも私にも覚えがあるので、気持ちはよくわかります。A・Bの場合は確かにやむを得ないので、当面は文法の基礎を固めてください。その代わり、いつまでに文法の問題集を完成し、いつから本格的な長文問題演習に取り組むかを具体的に決めておいてください。ただ、Cについては、やり方について根本的に見直す必要があります。例えば英文読解の授業の予習の際、「1行読むごとにわからない単語の意味を調べる」といったやり方をしていませんか? 楽ではないものの、かなりのエネルギーを消耗するのは、やり方のどこかに原因がある証拠です。長文問題に限ったことではありませんが、もし勉強していてつらかったり、疲労感が激しかったり、前向きにやれている気がしなかったりしたら、勉強方法に問題があります。予備校の職員や講師に早めに相談してください。

5.単語・熟語をどう覚え、どう忘れないようにするかがポイント

英語の問題を解く上で、そして英語の点数・成績を上げる上で、単語・熟語を覚えることは、避けることができない必修事項です。にもかかわらず、覚えられなくて困っている方が毎年かなり多いのです(受験生時代の私もそうでした)。単語・熟語集は数え切れないほどありますし、覚え方や覚えるための教材もかなりあります。でも、逆にいろいろありすぎて、本当に自分に合った覚え方が何なのかがわからない方も多いことでしょう。


別のページでもお話したとおり、私の基本的な考え方は、「万人に共通の勉強法はない」というものですが、英単語・熟語についても同様です。万人に共通した覚え方はありません。理屈では「確かにその通りで、これなら覚えられる」と思っても、そのやり方で継続できるとは限らないからです。かといって、どう覚えるかをいつまでも迷っていたら、覚える時間がその分なくなってしまいます。常に「どうすれば覚えられて、かつ忘れないようにできるか」を意識しながら勉強を続けてほしいのですが、「それではどうすればいいか教えてほしい」という方のために、以前から多くの講師がすすめていて、かつ私も同意見だと思うやり方をご紹介いたします。

●高校や予備校の授業時の教材や、使用中の問題集に出てきた単語をその都度覚えることをまずは繰り返す。

●目や手、頭(脳)、耳など、体のあらゆる器官を使って覚えることで、「体のどこかが覚えている」「あらゆる器官を使ったことがインパクトになって忘れない」といった感覚で記憶できるようにする。

●複数の単語・熟語集をあれこれ使わず、特定の1冊を繰り返しこなす。もし複数使用したければ1冊ずつこなし、2冊目以降の単語集では、前に使っていた単語集になかった単語を記憶したり、以前覚えた単語を忘れていないかチェックするとともに、2番目以降の意味や関連事項も付け加えて覚えたりするなどの工夫をする。

●単語カードは、複数回チェックしても覚えられなかった単語のみ作成する。また、電子辞書の履歴機能を単語カード代わりに利用するなど、「文明の利器」も大いに活用する。

●英単語を紙に何度も書いて覚える際は、日本語の意味も一緒に書く。
  例:「girl girl ・・・」ではなく、「girl少女 girl少女・・・」と書く。

いかがでしょうか。どれも初めて聞く内容ではないかもしれませんが、それはつまり、「特効薬はない」ということです。ですので、いかに楽して大量に覚えられるかより、いかに毎日前向きに継続して覚えられるようにするかを追求した方が、結果的に単語・熟語をより多く覚えられると思いますし、忘れないと思います。ちなみに、「『in-』で始まる単語には『●●●』という意味がある」といった、語源から覚えるものや、1つの単語から派生する単語をまとめて覚える、というやり方をすすめているものもありますが、あえて取り上げませんでした。かえって混乱することがあるからです。ただ、「その方が覚えられる」という方は、ぜひ採用していただければと思います。

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